2001 Fiscal Year Annual Research Report
腎疾患進展機序の研究―悪化因子としての脂肪酸と抑制因子としての脂肪酸結合蛋白―
Project/Area Number |
13671099
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
木村 健二郎 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (00161555)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平田 恭信 東京大学, 医学部・附属病院, 循環器内科・講師 (70167609)
菅谷 健 田辺製薬株式会社, 創薬研究所, 主任研究員
佐藤 武夫 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師 (40215801)
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Keywords | 脂肪酸結合蛋白 / 腎障害 / 尿蛋白 / 近位尿細管上皮細胞 / 培養上皮細胞 / トランスジェニックスマウス |
Research Abstract |
尿蛋白による賢臓の間質尿細管障害の発症と進展の機序を明らかにする目的で実験を行い、以下の結果を得た。 (1)マウスの蛋白負荷モデル:12週齢のBalb/cマウスの腹腔内に牛血清アルブミン(BSA)を連日14日間投与して、腎臓の間質尿細管障害を観察した。(1)組織学的検討:通常のBSA (Fraction V, Sigma)では強い間質尿細管障害が生じたが、脱脂したBSAでは間質尿細管障害は軽度に止まった。(2)BSA (Fraction V)中の脂肪酸分析: BSAに含まれる脂肪酸は主としてoleic acid, stearic acid, palmitic acid, linoleic acidであり、ヒトの血清脂肪酸とほぼ同様であった。(3)糸球体の電子顕微鏡検による検討: BSA負荷したマウスの糸球体上皮下に高電子密度の沈着物を認めた。この沈着物の量には投与するBSAによる違いは認められなかった。 (2)培養マウス近位尿細管上皮細胞におけるBSAの取り込みの検討:培養液中にBSAを添加して、BSAがどの程度細胞内に取り込まれるかを見た。通常のBSAでは247ng albumin/mg proteinであり、脱脂したBSAでは494ng albumin/mg proteinであり、両者に有意差は見られなかった。 (3)ヒト脂肪酸結合蛋白(L-FABP)トランスジェニックマウスでの蛋白負荷モデル:ヒトの脂肪酸結合蛋白の染色体遺伝子を導入したマウスを樹立して、(1)と同様の実験を行った。(1)と同様に、脂肪酸を含むBSAを投与したマウスでは強い間質尿細管障害が、脱脂したBSAを投与したマウスでは軽い間質尿細管障害が見られた。脂肪酸を含むBSAを投与したマウスでは尿中のL-FABPの排泄が増加し、また、腎組織中のL-FABPの遺伝子発現ならびに蛋白発現量は著明に増強した。 考察と今後の問題点:ヒトの腎疾患では尿中L-FABPが腎疾患の進行を予測する優れたマーカーであることが明らかにされている。本研究により、尿蛋白に含まれる脂肪酸が間質尿細管障害を惹起し(ないしは悪化させ)、L-FABPの発現を増強させていることが明らかになった。次年度は、現在想定されているL-FABPの細胞保護作用を明らかにしていく。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 上條敦子, 木村健二郎: "尿中肝臓型fatty acid binding protein (L-FABP)の意義"Annual Review腎臓2001(編集:伊藤克己、浅野泰、遠藤仁、御手洗哲也、東原英二). 53-57 (2001)
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[Publications] Kamijo A, Kimura K et al.: "Urinary Fatty Acids Bound to Albumin is an Aggravating Factor For the Tubulointerstitial Damage in Chronic Renal Disease"Journal of American Society of Nephrology. 12・(Abstract Issue). 680A (2001)