2002 Fiscal Year Annual Research Report
トロンビン受容体の活性化制御による新生児脳障害の治療に関する研究
Project/Area Number |
13671137
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Research Institution | Kobe University Hospital |
Principal Investigator |
常石 秀市 神戸大学, 医学部附属病院, 助手 (10271040)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横山 直樹 神戸大学, 医学部附属病院, 助手 (20314487)
米谷 昌彦 神戸大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (60221678)
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Keywords | トロンビン受容体 / PAR-1 / 血小板由来成長因子 / PDGF-α受容体 / hyper-myelination / 低酸素性虚血性脳障害 |
Research Abstract |
トロンビン受容体(PAR-1)の活性化により、血小板由来成長因子(platelet-derived growth factor : PDGF)α型受容体のmRNA発現増強が促されることが培養細胞において確認できたことから、PAR-1による分化抑制効果がPDGFの系を介している可能性が示唆された。そこで本年度は、PDGF-α型受容体と脳障害の関係を検討した。発達期脳において髄鞘形成を担うべきオリゴデンドロサイト(oligodendrocyte : OL)の分化を制御する因子としてPDGF-α型受容体が重要であり、その活性化はOL前駆細胞の分化を抑制し、その増殖を促すと考えられている。すなわちPDGF-α型受容体を活性化することで、OLの分化を抑制して障害への閾値を高め、低酸素虚血障害におけるダメージを軽減させる可能性があることを意味する。 PDGF-α型受容体はOL前駆細胞にのみ発現する分化マーカーであり、ラット大脳正常発達における検討では、出生時が最も豊富に発現しており、生後15日目から成獣にかけて減少していった。低酸素虚血負荷(左頚動脈結紮+8%酸素2時間負荷)により、PDGF-α型受容体のmRNAは負荷後30分で増加し、蛋白は負荷後72〜96時間後に一過性に有意に増加した。免疫組織染色では、低酸素虚血負荷側の障害を受けた大脳皮質にのみ染色性を認め、負荷後14日目まで染色性が持続した。 このことは、障害部位でのOL前駆細胞の相対的増加を意味するものであり、障害時にOLの分化を抑制して前駆細胞レベルに維持し、かつその増殖を促して、髄鞘化のソースであるOL前駆細胞を維持しようとする現象と考えられた。このことは、幼若脳の障害部位に見られる組織学的hyper-myelination現象を分子生物学的に捉えたものと考えられる。
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Research Products
(1 results)