乳管腺葉系の3次元再構築による乳癌乳管内進展の評価と最適な乳房温存手術への応用

2001 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 13671246
• Research Institution: Fukushima Medical University
• Principal Investigator: 君島 伊造 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (00161547)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 竹之下 誠一 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (10167489)
• Keywords: 乳癌 / 乳管内進展 / 乳管吻合 / 3次元再構築 / 画像解析装置 / 乳房温存療法 / 乳管内進展の病理 / 乳癌の発生と進展

Research Abstract

我々は、乳房温存手術材料を用いて乳管腺葉系を3次元的再構築する技法を開発し、乳癌の乳管内進展は乳管腺葉系に沿って区域性に存在する連続病変であること、また異なる乳管腺葉系の間に存在する乳管吻合(ductal anastomoses)が乳癌の広範な乳管内進展を形成する危険因子であることを明らかにした。本研究では、厚切り連続切片の立体的観察技法を全乳腺に応用することにより、全乳腺切除を行って得られた一つの乳腺全体について乳管腺葉系をコンピューター支援下に3次元再構築し、乳管吻合の解剖学的検討を行った。【材料および方法】皮下乳腺全切除術を施行したDCIS症例を用いた。切除材料は2mmに全割し、3次元再構築プログラム(TRI、RATOC、Tokyo)によって全乳管腺葉系のコンピューター再構築画像を作製した。【結果】一つの乳房には乳頭を中心に16個の乳管腺葉系が放射状に配列していた。乳房全体で計11箇所の乳管吻合がみられた。このうち、広範な乳癌の乳管内進展形成の危険因子である、異なる乳管腺葉系を連結する乳管吻合は2箇所であった。16個の乳管腺葉系の中で、乳管吻合によって連結された乳管腺葉系は2個(12.5%)であり、残りの14個の乳管腺葉系は各々解剖学的に完全に独立した区域性を示した。また、乳頭から4cmの範囲内には乳管吻合による異なる乳管腺葉系同士の連結はみられなかった。【考察】乳癌病巣の完全な切除を目指して乳管腺葉系を区域的に切除する場合、乳管腺葉系が解剖学的に独立しているかどうかは、手術治療上の極めて重要な解剖学的問題である。本研究では、乳管吻合により解剖学的な区域性が不完全であった乳管腺葉系の比率は全体の12.5%であった。また、乳管吻合発生部位の検討により、異なる乳管腺葉系を連結する乳管吻合は乳頭付近には存在しなかった。乳癌の乳管内進展が複数の乳管腺葉系に拡大する危険性は、乳頭付近に乳癌の乳管内進展が存在する場合よりも、むしろ乳腺の末梢領域に乳癌の乳管内進展が存在する場合の方が大きいと思われる。現代の乳癌に対する乳房温存療法は、切除断端癌遺残を出来るだけ減少させ、乳房切除術と同等に局所制御することが重要である。そのためには、本研究で明らかになったような乳管腺葉系の解剖学的特徴を充分理解した上で、乳癌の乳管内進展を含めた乳癌病変の必要充分な外科的切除に臨む必要がある。

Research Products

• [Publications] 大竹 徹: "コンピューター支援下3次元再構築による乳房内全乳管腺葉系の解剖学的検討"乳癌の臨床. 15(5). 610-611 (2000)
• [Publications] Kimijima I, et al.: "Scattered fat invasion : an indication for poor prognosis in premenopausal, and for positive estrogen receptor in postmenopausal breast cancer patients"Oncology. 59. 25-30 (2000)
• [Publications] Ohtake T, et al.: "Three-dimensional reconstruction of the whole breast duct/lobular units"Breast Cancer Research and Treatment. 64(1). 104 (2000)
• [Publications] Ohtake T, et al.: "Giant mammary hamartoma diagnosed by stereomicroscopic analysis of the mammary glandular tree in an adolescent girl : report of a case"Surgery Today. 31. 433-437 (2001)
• [Publications] Ohtake T, et al.: "Computer-assisted complete three-dimensional reconstruction of the mammary ductal/lobular systems. Implications of ductal anastomoses for breast-conserving surgery"Cancer. 91. 2263-2272 (2001)
• [Publications] Watanabe T, et al.: "Sentinel node biopsy with technetium-99m colloidal rhenium sulphide in patients with breast cancer"British Journal of Surgery. 88. 704-707 (2001)