2004 Fiscal Year Annual Research Report
胃癌の腹膜播種性転移における周囲微小環境の影響とその分子機構の解析
Project/Area Number |
13671329
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
八代 正和 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 講師 (60305638)
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Keywords | 胃癌 / 腹膜播種性転移 / 線維芽細胞 / HGF |
Research Abstract |
癌性腹膜炎は胃癌の転移形式のなかでも高頻度に認められ,予後を決定する要因であるが,その機序はいまだ十分には明らかにされていない.手術後の腹膜損傷部に播種性転移がおこりやすいことは,臨床的および実験的に報告されており,播種性転移の防御作用を有する中皮細胞の欠損や炎症性肉芽組織の発達がその原因と考えられている.胃癌の腹膜播種性転移が手術などの外的な損傷をうけていない場合にも多く認められる事実から,胃癌癌性腹膜炎患者の腹膜にも類似の組織変化がおこっている可能性が考えられる.今回,胃癌腹膜播種性転移株を用い,癌細胞がもたらす腹膜組織の変化と腹膜播種性転移機序との関連性を検討した.胃癌細胞株の無血清培養上清をマウス腹腔内接種し,腹膜の組織学的変化を検討したところ,マウスの正常腹膜は,ほとんど間質細胞が認められないのに対し,胃癌細胞培養上清をマウス腹腔内接種することにより,腹膜組織に線維芽細胞などの間質成分の増生と中皮細胞の剥離が認められた.胃癌細胞が線維芽細胞の増殖に及ぼす影響を細胞数算定やHPLCを用い検討したところ,胃癌細胞培養上清は,線維芽細胞の増殖を有意に促進した.HPLCの検討により,この増殖促進には,胃癌細胞が産生する分子量25-43KDaの物質が関与していると考えられた.また,線維芽細胞の培養上清により,中皮細胞が紡錘形に変化し,細胞間隙の開大が認められた.この形態変化作用は抗HGF中和抗体により抑制された.以上のことから,胃癌細胞は腹膜に炎症性間質組織を増生させ,この増殖促進物質は癌細胞が産生する分子量25-43KDaの物質と考えられた.胃癌細胞は,増生した腹膜線維芽細胞の産生するHGFにより,中皮細胞の形態変化を誘導し,腹膜を癌の転移に適した環境へと変化させている可能性が示唆された。
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Research Products
(2 results)