2001 Fiscal Year Annual Research Report
マウス海馬歯状回肥大化モデルを用いた海馬硬化病態増強因子の検索
Project/Area Number |
13671432
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
鈴木 文夫 滋賀医科大学, 医学部, 講師 (80171247)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒川 清 滋賀医科大学, 医学部, 助教授 (40215083)
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Keywords | 海馬硬化 / AMPA / KA受容体 / NMDA受容体 / アンタゴニスト / てんかんモデル |
Research Abstract |
マウス海馬にカイニン酸を投与することにより惹起される海馬顆粒細胞の分散・肥大化モデルでは形態上、脳波上、糖代謝などにおいて人の海馬硬化にきわめて類似性の高いモデルである。このモデルを用い難知性てんかんである海馬硬化の成因に関する知見を得ることを目的に研究を行った。実験計画に準じ、まず海馬の切片培養に対する肥大化海馬蛋白抽出液の効果を調べたところ、いくつかの条件にて蛋白抽出液の投与により、却って切片培養上の海馬神経細胞に障害が認められた。この結果より蛋白抽出液中に興奮性神経毒、すなわちグルタミン酸が過剰発現していることが推測された。この興奮性神経伝達物質の過剰発現が進行性の顆粒細胞の分散肥大化に関与しているのではないかと考え、その検証のため分散・肥大化に及ぼす各種グルタミン酸受容体拮抗薬の影響を調べた。AMPA/KA受容体のアンタゴニストであるGYK152466をカイニン酸投与前に全身投与すると、海馬の神経細胞はほとんどが変性をまぬがれた。しかし、同量のGYK152466をカイニン酸投与3時間後に投与すると、顆粒細胞の分散・肥大化には何ら影響しなかった。一方、NMDA受容体のアンタゴニストであるMK-801は前投与では何ら影響しなかったが、カイニン酸投与3時間後に投与すると、アンモン角の錐体細胞や門部の神経細胞は肥大化の場合と同様に変性脱落するものの分散・肥大化は高度に抑制された。この形態変化はNMDAの海馬内投与では惹起できないことより、AMPA/KAとNMDA受容体系両者の連関した増強が海馬硬化類似の形態変化の発生に重要であることがわかった。これまで、多くの研究はいずれかの受容体アンタゴニストについて抗てんかん薬として可能性を調べているが、より効果的な治療としては両者を抑制する必要があるものと考えられた。
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