2001 Fiscal Year Annual Research Report
生体内に存在する分化誘導因子の同定と脳腫瘍に対する分化療法への応用
Project/Area Number |
13671442
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
宮園 正之 九州大学, 医学部・附属病院, 助手 (70325463)
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Keywords | NT2細胞 / 分化 / 移動 / 移植 / 胚細胞癌 / 基底核 / マウス / 播種 |
Research Abstract |
ヒト胎児性癌細胞の一つであるNTera 2 (NT2)細胞を成人マウスの基底核内に移植するとNT2細胞は増殖能を失い、神経へと分化した。この現象はホスト側のマウス脳の発達段階に規制されるかどうかを見るために、生後まもなくのマウスから段階を追って基底核内への移植実験を行った。その結果、生直後(P0)〜生後14日(P14)まではすべて腫瘍化してしまい大部分の症例はくも膜下腔や脳室壁に播種した。生後16日(P16)以降から成人脳の基底核へ移植した時と同様に腫瘍細胞は分化へと向かった。これらの再現性を確かめると、確かにP7までは全てのマウスで腫瘍のままであり分化に向かわなかった。P12以降は一部のマウスで分化に向かうマウスが現れた。しかし、以前報告した成人の脳であってもくも膜下腔に腫瘍が漏れると、腫瘍が増殖しマウスは腫瘍死する事がわかていたため、それを避けるために、移植するNT2細胞を少なくし(3000個以下)、注入する針をグラスパイペットに変えて実験を行った。手技が安定するまで注入した翌日に脳を取り出して腫瘍がきちんと基底核に注入されていることを確認した。基底核内に注入したにもかかわらず、分化に向かうマウスの割合がホスト脳が未熟であるほど高くなった。すなわちP16以降でも全例は分化の方向に向くのではなく又成人マウスでも数パーセントのマウスは脳表からくも膜下腔に播種する事が判った。これらの結果から、NT2細胞はくも膜下腔や脳室壁に移動しやすい性格を持っており、ホスト脳組織が未熟であればあるほど、腫瘍細胞は移動しやすいことが判った。
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