2002 Fiscal Year Annual Research Report
高時間分解能の複数電流双極子推定による感覚情報弁別処理の脳内神経機構の解析
Project/Area Number |
13671452
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University of Health Sciences |
Principal Investigator |
菊池 吉晃 東京都立保健科学大学, 保健科学部, 教授 (50134739)
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Keywords | 脳磁界 / 複数電流双極子 / 海馬 / P3 / ワーキングメモリー |
Research Abstract |
全頭型脳磁界計測システムは無侵襲で脳内神経活動をきわめて高い時間分解能で計測できる。同システムの時間分解能はmsecオーダーであり、他の無侵襲脳機能計測法であるfMRI, PET, NIRSを凌駕するという点できわめて有効である。本研究では、64チャンネルの全頭型脳磁界計測システムから出力される脳磁界信号に基づいて、高時間分解能でマルチダイポール推定をするための解析系を構成し、聴覚関連情報の弁別に伴う脳内活動について検討した。 推定位置をMRI画像上へ重畳するための支援ソフト、MRI画像の処理ソフト、その他一連の脳磁界処理に必要なツールを作成した。また、同時多発的な脳内発生源に対応するマルチダイポール推定を行う際の推定基準について検討した結果、以下がその基準として妥当であることが確認された。(1)等磁界線図における複数の極大領域と極小領域から、対を選択する基準として、片半球に存在する対を優先するとともに最近接するものを対の最優先候補として採用する。(2)推定誤差の基準として、2,3,4ダイポールの場合、それぞれ上限を20%,15%,10%程度とする。(3)推定ダイポールの時空間的安定性・連続性に基づき推定を行うことを原則とする。 このアルゴリズムに基づき、感覚情報の弁別に伴う脳内活動についてodd-ball課題を用いて検討した結果、(1)感覚情報固有の処理に関与する聴覚野や視覚野などの活動、(2)前頭前野、帯状回など、注意の制御に関与するネットワークの活動、(3)背外側前頭前野、海馬、頭頂連合野、側頭連合野など、記憶に関与するネットワークの活動が、初期ではほぼこの時間軸に沿って、後期ではこれらの活動が並行することが確認された。これらの実験結果から、感覚情報の弁別処理においては、感覚情報固有の一時領野の早期活動に加えて、海馬と双方向性に神経連絡のある広汎な大脳皮質連合野、そして前頭前野排外側部の並行的活動があり、大脳皮質全体のワーキングメモリーシステムのネットワークが関与することが示唆された。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Tsukimoto, H., Kakimoto, M., Morita, C., Kikuchi, Y., et al.: "Rule discovery from fMRI brain images by logical regression analysis"Progress in Discovery Science, Springer-Verlag Berlin, Heidelberg, New York. 232-245 (2002)
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[Publications] 畠山英子, 石川宣子, 菊池吉晃, 他: "生命科学を基礎とする感性と食環境ならびに音・音楽環境の相関に関する研究"東北福祉大学感性福祉研究所研究報告書. 62-65 (2002)
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[Publications] 大渕 新, 乳井嘉之, 篠原広行, 菊池吉晃: "MRI2次元フーリエ変換法における位相エンコード数と再構成像の関係"第8回東京保健科学学会学術集会抄録集. 34 (2002)
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[Publications] 大渕 新, 乳井嘉之, 篠原広行, 菊池吉晃: "MRIスピンエコー法の計算機シミュレーション"第8回東京保健科学学会学術集会抄録集. 35 (2002)
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[Publications] 栃木捷一郎, 渡邊 修, 木下正信, 菊池吉晃, 笠井久隆, 米本恭三: "片側性大脳半球血管障害例における定量的脳幹誘発電筋電図所見"第40回日本リハビリテーション医学会学術集会. (2003)