2003 Fiscal Year Annual Research Report
アセトアミノフェン中毒における拮抗剤、毒物性代謝産物の動態に関する研究
Project/Area Number |
13671623
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
切通 雅也 関西医科大学, 医学部, 助手 (10330185)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小宮山 豊 関西医科大学, 医学部, 講師 (40140264)
中谷 壽男 関西医科大学, 医学部, 教授 (70188978)
新谷 裕 関西医科大学, 医学部, 助手 (90309229)
高橋 伯夫 関西医科大学, 医学部, 教授 (80094431)
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Keywords | アセトアミノフェン / Nアセチルシステイン / Nアセチルベンゾキノンイミン / 中毒 / HPLC / LCMS |
Research Abstract |
アセトアミノフェン中毒の作用機構はすでに解明されつつあり、アセトアミノフェン有毒中間代謝産物、N-acetyl-p-benzoquinone imine(NAPQI)が生体内の活性SH化合物、還元型glutathione(GSH)が枯渇すると肝臓の種々のたんぱく質と不可逆的な結合を起こすことにより毒性を発生すると考えられている。すなわち、本物質は生体内で還元型グルタチオン(GSH)やチオールを有する蛋白質と結合する。GSHはNAPQIと共有結合化合物を形成し、3'-GS-APAPやChenらの報告にある2'-GS-APAPとなる事は最近報告されたとおりである(Biochemistry 38:8159-66,1999)。今年度、液体クロマトグラフィー/質量分(LC/MS)による血液中のNAPQI検出に関する検討を行ない、重要な知見を得た。すなわち、NAPQIは、急速に活性SHなどと結合するが、極めて不安定な物質であるため、直接検出することは困難である。しかし、NAPQIと生体内活性SHのGSHの共有結合物(GS-APAP)は比較的容易にLC/MSにより検出できることを認めた。このGS-APAPはLC/MSのクロマトグラム上、近接した2種類のピークとして存在し(下図)、Chenの報告から、2'一体および3'一体と考えられた。さらに血液への添加実験でもGS-APAPを検出できた。 さらにAPAP中毒治療薬であるN-acetyl-L-cysteine(NAC)についても同様の所見を得た。すなわち、我々はNACもGSHと同様の活性SHを有する化合物であることに注目しNAPQIとNACを混合した後、LC/MSで検出を試みたところ、その特異的質量分析シグナルを捕らえることに成功した。これらの成果の一部は2003年日本中毒学会総会にて報告した。 症例が搬入された際には、搬入時の血液、拮抗剤投与後、経時的に血液中の各成分の分析を行ったが、臨床症例は予定より少ない数であった。これらに対して、拮抗剤としてムコフィリンを経管的に胃内に投与し、治療前後の上記アセトアミノフェンの毒性代謝産物の濃度を治療の前、後で測定しえた。これらの結果につき、別途、冊子体にて報告する。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 堀 寧, 岩崎泰昌, 黒木由美子, 小宮山豊, 中谷壽男, 他: "アセトアミノフェン"中毒研究. 15(4). 385-390 (2002)
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[Publications] 中谷壽男, 新谷 裕, 原 克子, 小宮山豊, 高橋伯夫: "急性中毒における高度救命救急センターの役割"日本職業・災害医学会雑誌. 50(5). 331-334 (2002)
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[Publications] 中谷壽男, 山本保博: "急性中毒"今日の治療指針. 44. 1041-1064 (2002)
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[Publications] 中谷壽男, 山本保博: "急性中毒"今日の治療指針. 45. 1099-1124 (2003)
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[Publications] 中谷壽男, 山本保博: "急性中毒"今日の治療指針. 46. 1129-1154 (2004)