2003 Fiscal Year Annual Research Report
臨床応用可能な脳虚血耐性獲得法の開発-経頭蓋磁気による耐性獲得およびメカニズムの解明-
Project/Area Number |
13671625
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
原田 秀樹 久留米大学, 医学部, 講師 (30198923)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三島 康典 久留米大学, 医学部, 助手 (30258470)
松田 鶴夫 久留米工業大学, 知能工学研究所, 助教授 (60258598)
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Keywords | 脳虚血耐性 / 電気痙攣療法 / ラット前脳虚血モデル / ラット局所脳虚血モデル |
Research Abstract |
【目的】脳虚血が予測される場合、何らかの処置で虚血耐性を獲得させておくことは臨床上、極めて重要であるが短時間脳虚血などの侵襲を伴う処置によって発現することが知られているのみで、臨床応用可能な方法は未だ開発されていない。そこで非侵襲的経頭蓋磁気刺激による虚血耐性導入の可能性を調べる目的で以下の二つの実験を行った。 実験1(in vivo study)【方法】ペットボトルに無麻酔下で拘束した雄性ラットをソレノイドコイル中央に置き、0.1-40mTの平均磁場強度で、10-25ヘルツの正弦波磁場に20分間-24時間曝露した。2日後、4 vessels modelによる5分間または8分間の前脳虚血モデルを作製、再灌流一週間後に海馬CA1細胞の生存率を指標として、虚血耐性獲得の有無を非曝露ラットと比較した。また、磁場暴露のみ施行したラットの一週間後の形態学的変化も検討した。【結果】磁場暴露中ペットボトル内の温度上昇は認められなかった。また暴露中、痙攣などは誘発されなかった。磁場暴露のみを施行した一週間後の脳切片に形態学的変化は認められなかった。前脳虚血による遅発性細胞死については、磁場暴露群のうち25ヘルツ磁場暴露群で細胞死は抑制された。 実験2(in vitro study)【方法】雄性ラットを実験1と同様に、0.1-40mTの平均磁揚強度で、10-25ヘルツの正弦波磁場に20分間-24時間曝露した。2日後、大脳を摘出し、厚さ0.4mmの矢状断海馬スライス標本を作成、灌流装置記録槽に置き、実験的脳虚血負荷(酸素・グルコース除去液灌流)による反応を、1)細胞内記録法による膜電位変化と、2)細胞内Ca濃度変化を指標として虚血耐性獲得の有無を非曝露ラットと比較検討した。【結果】非曝露群では虚血負荷開始約6分後に急激且つ急峻な脱分極電位が発生し、この直後に正常液(酸素・グルコース含有液)を再灌流しても脱分極は持続、電気生理学的に神経細胞は機能不全に陥った。細胞内Ca濃度は急峻脱分極電位発生と同時に急激に増加し、再灌流すると徐々に低下した。一方、曝露群では虚血負荷後に同様な脱分極電位が発生したが、再灌流により静止電位まで再分極し、電気生理学的にも機能回復を示すニューロンが出現した。また虚血によって増加した細胞内Caの再灌流による回復過程は非曝露群に比して速かった。 実験3 以上の実験結果のメカニズムを探るために、拘束ストレス負荷ラットと正弦波暴露ラットとにおいてc-Fos mRNAの発現について検討した。拘束ストレスのみでは負荷後6時間までの経時的変化に有意差はなかった。25Hzの正弦波暴露ラットにおいては負荷後早期にc-Fos mRNAの発現を確認した。通常、20ガウス程度ではそれに伴ううず電流は発生しないとされており、磁気刺激による耐性獲得がうず電流を介さずとも細胞内伝達機構賦活化させる可能性を示唆した。
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