子宮内膜の増殖・分化に関与するヒストンアセチル化酵素の同定

2001 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 13671743
• Research Institution: Keio University
• Principal Investigator: 丸山 哲夫 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (10209702)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 清水 亜紀 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (60306826) ; 山本 百合恵 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (00286543) ; 酒井 のぞみ 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (60276326)
• Keywords: ヒストンアセチル化 / 子宮内膜 / 分化 / コアヒストン / プロラクチン / インシュリン様成長因子結合蛋白1

Research Abstract

初年度は、ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤であるtrichostatin A(TSA)およびsodium butyrate(NaB)を用いて、子宮内膜間質細胞の分化である脱落膜化への影響を検討した。良性疾患を有する摘出子宮より内膜を採取し、間質細胞と腺細胞をそれぞれ分離・純化した後、性ステロイド、TSAあるいはNaBの存在下で培養し、形態変化に加えて、脱落膜化マーカーであるinsulin-like growth factor binding protein 1(IGFBP-1)とprolactin(PRL)のmRNAの発現をRT-PCRにより解析し、脱落膜化の指標とした。同時に、IGFBP-1のcDNA fragmentをcompetitorとしたcompetitive PCRを行い、mRNAの定量化を行った。さらに上記培養内膜よりヒストンを抽出し、Acid-Urea-Triton gelによるコアヒストンのアセチル化レベルの検討に加えて、特異的アセチル化ヒストン抗体を用いてアセチル化リジンの部位同定を行った。TSAは、10〜500ng/mlの範囲で用量依存性に性ステロイドによるIGFBP-1ならびにPRL発現を増強した。また、100〜500ng/mlの比較的高濃度では、単独でも形態変化とIGFBP-1およびPRL両者の発現を伴う脱落膜化を24〜48時間で誘導し得た。一方腺上皮細胞では、いずれの処理によってもIGFBP-1およびPRLの発現は誘導しなかった。またNaBは、5〜50mMの範囲では脱落膜化を誘導しなかった。いずれの系においてもβ-actinの発現量に変化は無かった。ヒストンアセチル化レベルの上昇により、細胞・薬剤特異的に分化関連遺伝子発現の惹起と間質細胞の脱落膜化が誘導される可能性が示された。その際、一部のコアヒストンの特定のリジン残基がアセチル化されることが示された。

Research Products

• [Publications] Maruyama T, Yamamoto Y, Sakai N, Shimizu A, Shimoki A, Masuda T, Yoshimura Y: "Protein tyrosine phosphorylation signaling in the differentiation of human endometrial stromal cells"Keio J Med. (In press). (2002)
• [Publications] Hamatani T, Sasaki H, Ishihara K, Hida N, Maruyama T, Yoshimura Y, Hata J, Umezawa A: "Epigenetic mark sequence of the H19 gene in human sperm"Biochim Biophys Acta. 1518(1-2). 137-144 (2001)
• [Publications] 丸山 哲夫, 吉村 泰典: "多嚢胞性卵巣症候群"日本産科婦人科学会雑誌. (印刷中). (2002)
• [Publications] 小澤伸晃, 福地 智恵, 丸山 哲夫, 吉村 泰典: "染色体異常と不育症"産科と婦人科. 6. 715-723 (2001)
• [Publications] 丸山 哲夫, 山本 百合恵, 浜谷 敏生, 酒井 のぞみ, 清水 亜紀, 吉村 泰典: "AIDの適応と成績"産婦人科の世界. 53. 210-216 (2001)
• [Publications] 浜谷 敏生, 山本 百合恵, 酒井 のぞみ, 丸山 哲夫, 吉村 泰典: "心身状況における月経不順の特徴と治療方針-肥満と月経異常-"産婦人科の実際. 50. 169-175 (2001)
• [Publications] Maruyama T, Yamamoto Y, Sakai N, Sakurai R, Shimizu A, Hamatani T, Yoshimura Y: "Protein tyrosine kinases and tyrosine phosphorylation in differentiating human endometrial stromal cells."Cell and Molecular Biology of Endometrium in Health and Disease""Soeisya, Osaka,(eds. Maruo T, Barlow D, Mardon H, Kennedy S). 94-106 (2002)