2002 Fiscal Year Annual Research Report
喉頭摘出者における代用音声の発声調節機構に関する研究-喉頭発声との関連-
Project/Area Number |
13671780
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
毛利 光宏 神戸大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (20166317)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大月 直樹 神戸大学, 医学部附属病院, 講師 (40343264)
斎藤 幹 神戸大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (30335442)
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Keywords | 喉頭摘出手術 / 音声リハビリテーション / 気管食道瘻発声 / 発声機構 / 下咽頭収縮筋 / 気管幕腰部血流 |
Research Abstract |
1、気管食道瘻手術の不成功例の分析 気管食道瘻形成術による発声の成功率はおよそ80%であるが、不成功例の主原因は気管膜様部・食道側側吻合部の閉鎖、気管膜様部の脱落、患者の発声意欲の欠如であることがわかった。これらのうち、側側吻合部の閉鎖は術者の技術的未熟さに起因する。気管膜様部の脱落の原因には、患者の早期嚥下による機械的な要因と、気管膜様部の血流障害による壊死がある。気管膜様部の脱落は甲状腺全摘時すなわち上下甲状腺動脈を切断した場合に頻度が多いことがわかった。気管食道瘻手術に用いられる気管膜様部は下方有茎であるのでもともと血流に乏しく、それに加えて気管膜様部を栄養する下甲状腺動脈が切断されると血流量低下が促進される。下甲状腺動脈の切断は1本では血流低下は少ないが2本になる著明となり、したがって甲状腺全摘時に発生しやすいと考えられた。 2、気管食道瘻発声における下咽頭収縮筋・頸部食道筋の支配神経 気管食道瘻発声において新声門を形成する下咽頭収縮筋筋活動の支配神経は迷走神経・舌咽神経由来の咽頭神経叢であることが確認された。また、頸部食道筋の発声時収縮は、気管食道瘻発声時に呼気を食道に逸脱させず、呼気を発声に有効に使う合目的的現象であるが、その支配神経は迷走神経食道枝であると結論された。さらに正常人では横紋筋部の食道は呼気時に収縮して内腔が閉鎖していると結論された。すなわち、喉頭摘出には迷走神経食道枝の脱神経した頸部食道部は発生時収縮せず、呼気によって膨らむのに対し、神経が残存した部分は術前同様収縮するので、あたかも頸部食道が術後収縮閉鎖するように観察されたものである。すなわち、気管食道瘻発声時の頸部食道閉鎖機能は術後新たに獲得されたものではなく、残存機能が顕現化したものと考えられた。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 長谷川信吾: "耳下腺浸潤をきたした外毛根鞘癌"耳鼻咽喉科・頭頸部外科. 74. 393-396 (2002)
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[Publications] 毛利光宏: "喉頭全摘後における音声再建の実際と今後の課題"JOHNS. 18(4). 819-822 (2002)
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[Publications] 毛利光宏: "咽頭リンパ節の郭清"JOHNS. 18(11). 1980-1983 (2002)
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[Publications] 毛利光宏: "気管食道科領域の再建-喉頭摘出後の音声再建-"日本気管食道科学会会報. (in press).
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[Publications] 毛利光宏: "耳鼻咽喉科診療プラクティス第8巻"文光堂. 257 (2002)