2001 Fiscal Year Annual Research Report
転写因子の制御による感音難聴の治療および予防に関する検討
Project/Area Number |
13671798
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
小川 郁 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (00169179)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荻田 喜代一 摂南大学, 薬学部, 助教授 (90169219)
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Keywords | 感音難聴 / 音響外傷 / 転写因子 / 酸化的ストレス / AP-1 / c-FOS / HIF-1 |
Research Abstract |
本研究の目的は感音難聴の主病巣である蝸牛における強大音負荷等による酸化的ストレスのシグナル伝導路の解明、その中での遺伝子発現制御様式の解明、ストレス応答遺伝子の同定などにより、最終的には感音難聴の治療法および予防法を追求することにある。本年度は強大音負荷によるTTS(temporary threshold shift)とPTS(permanent threshold shift)における蝸牛組織内転写因子の活性化の違い、およびレドックス感受性遺伝子転写制御因子の一つであるHIF-1(hypoxia-inducible factor)の発現について検討した。実験にはプライエル反射陽性のハートレー系モルモットを用いた。モルモットに種々の音圧、持続時間の帯域雑音を負荷、その後の蝸牛機能の変化を聴性脳幹反応(ABR)および耳音響放射により測定し、TTSおよびPTSを作成した。TTS動物モデルの蝸牛コルチ器で、支持細胞核にc-Fosの発現を認めた。c-Fosは、酸化的ストレスの結果、転写因子AP-1(activater protein-1)の構成蛋白として誘導されたものと推測された。聴覚障害の可逆性、支持細胞の堅牢性を考慮すると、AP-1が防御的機構に貢献するものと予想された。また、HIF-1の発現について急性音響外傷モルモットを用いて検討した。強大音負荷を行ったモルモットにおいては、蝸牛感覚上皮内の外有毛細胞において明らかなHIF-1発現の上昇がみとめられたことから、酸化的ストレスに応答する種々の遺伝子発現を制御していると考えられた。内耳障害におけるレドックス制御機構およびこれらの転写制御のメカニズムを解明することは、急性感音難聴のメカニズムの解明および治療につながるものと考えられた。
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Research Products
(1 results)