2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13671997
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
松本 宏之 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 助手 (90282764)
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Keywords | HIV / 歯科保存学的アプローチ / 唾液 / う蝕 / 歯周疾患 / 口腔 |
Research Abstract |
一般にわが国において歯を失う主な原因は、罹患率が高いう蝕と歯周疾患である。HIV/AIDS患者のう蝕と歯周疾患については、その状況は同様以上と想像される。しかし、さまざまな要因によりHIV/AIDS患者の歯科受診が容易ではないこともあり、う蝕と歯周疾患の予防や早期発見が遅れがちになると思われる。そこで、歯科保存学的アプローチの必要性を検討するため、HIV/AIDS息者のう蝕と歯周疾患の罹患状況を調査した。平成13年4月1日から平成14年3月31日までの期間でHIV/AIDS患者を対象に、本調査に対してインフォームド・コンセントの得られた日本人30名(男性25名、女性5名、平均年齢34.5歳)とした。通常の口腔診査、唾液量測定、唾液検査(CRT^Rbacteria, Dentocult^R)および唾液潜血反応検査(SALIVASTER^R)を行い、それらの結果を全身状態と照合して検討した。感染経路は、同性間性的接触23名、異性間性的接触5名、凝固因子製剤1名、その他1名であり、DMFは平均22.4本、PDIは平均4.4、唾液量は平均8.6mlであった。菌数が10^5CFU/ml以上あったミュータンス菌およぴラクトバチラス菌の存在とCD4値には相関は認められなかった。唾液量5m1以下の患者3名にはカンジタ菌が認められた。唾液潜血反応は、陰性2名、疑陽性7名、陽性21名であった。HIV/AIDS患者において、歯周疾患によると考えられる唾液潜血反応陽性が高頻度に認められた。う蝕の原因といわれる菌と全身状態との関連は認められなかった。HIV治療薬による唾液分泌量低下が報告されており、う蝕進行には予防的配慮が必要である。また、唾液中の血液成分によるHIVの2次感染予防のため、潜血反応陽性(70%)の原因と考えられる歯周疾患を予防する歯科保存学的アプローチも重要となる。以上より、う蝕と歯周疾患の進行が防止できれば、HIV/AIDS患者の口腔におけるQOLの向上にもつながるものと考えられる。今後、HIV/AIDS患者のう蝕と歯周疾患の予防,早期発見を含めた歯科保存学的アプローチを積極的に提供する必要があると考えられた。
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