2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13671997
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
松本 宏之 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 助手 (90282764)
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Keywords | HIV / 卒後教育 / 歯科診療 / 口腔疾患 / HAART / エイズ / 口腔カンジダ / 日和見感染症 |
Research Abstract |
CD4値が300以上でHAARTを実施しているHIV陽性患者の口腔カンジダ検出率は20%であったが、口腔カンジタ症および他の口腔内日和見感染症の発症は認められなかった。しかし、HAARTによる口腔清掃の意欲低下ケース、唾液分泌量減少ケース、嘔吐ケースが認められた。そこで、歯科医療機関の歯科医療従事者に対し本研究にて得られたHIV歯科臨床情報を共有し、HIV歯科診療の推進を図ることを目的として東京医科歯科大学歯学部附属病院においてHIV歯科診療の卒後研修を開始した。本研修の教育効果を評価するため、研修参加前後の参加者意織調査を実施した。結果は以下のとおりであった。1.参加前には曖昧だったエイズに関する知織が、HIV最新情報の講義により明確なものとなった。2.HIV歯科診療の受け入れについては、研修前は受け入れ困難と答えた参加者の主なバリヤーとして、1)守秘義務履行が困難な部分があるため自院のイメージダウンの恐れ、2)HIV感染対策経費および労力の負担増加による経営への悪影響、3)HIV感染症に対する情報不足によるHIV感染者への偏見・差別、4)HIV歯科診療未経験からくるHIV感染事故への恐怖および自院スタッフの受け入れに対してのコンセンサスが得られにくい。が挙げられた。研修参加前にHIV感染者受け入れは困難と答えた参加者のうち、研修後には28%の参加者が積極的に受け入れると変化した。3.歯科診療時のHIV感染事故直後の本院での具体的対応法が理解できた。4.HIV初感染の口腔内症状や全身症状・徴侯が確認できるようになったことから、歯科医師としてHIV感染の第一発見者になる可能性のあることについて心構えができた。5.本院のみで実施しているHIV感染者との交流によって、HIV感染者に対する参加者の先入観を訂正できた。6.本院でのウイルス感染予防事故対策を共有化できた。7.HIV歯科診療時の患者対応スキルの向上ができた。すなわち、1)最新抗HIV薬の情報から歯科薬品の使用に注意する。また、食事後に抗HIV薬服用する患者に対して抜歯等で食事の時間的制限を与えないようにする。2)HAARTについて担当医師、薬剤師のみならずカウンセラー,栄養士,ソーシャルワーカーとも連携をとり、もし服用コンプライアンスが低下した場合口腔セルフケアも低下するケースもあるため患者の自己健康管理についてカウンセリング対応をして患者支援をする。3)食欲低下や性脂肪値が上昇したHIV感染者のための食事指導にも直接介入する。4)歯周ポケットから出血が認められるHIV感染者のオーラルセックスにおけるセーファーセックス指導をする。8.HIV歯科診療時にトラブルが生じた際、歯科院内で孤立せず相互に相談ができ継続に最新エイズ情報提供のサポートをする本院があるため安心してHIV感染者を受け入れられるようになった。以上より、本研修はHIV歯科診療について著しい教育効果が確認できた。また、本院以外の医療機関を含めた病診連携が進み各医療機関とのHIV歯科診療のネットワークが構築されつつあることも成果のひとつであった。現在、HIV感染者が急増している中、HIV歯科診療を受け入れる医療機関の確保及び支援が急務と思われることからも、HAARTによる口腔に関する情報提供も含めてHIV歯科診療卒後教育を充実してゆくことが重要と思われた。
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