2001 Fiscal Year Annual Research Report
歯髄組織の再生治療における血小板由来増殖因子(PDGF)応用の可能性を探る
Project/Area Number |
13672009
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Research Institution | Meikai University |
Principal Investigator |
横瀬 敏志 明海大学, 歯学部, 助教授 (90245803)
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Keywords | 血小板由来増殖因子 / 歯髄組織 / 細胞分化 / 創傷治癒 |
Research Abstract |
(目的)血小板由来増殖因子(PDGF)はA鎖とB鎖のポリペプチド構造を持ち、それぞれのホモダイマー、ならびにヘテロダイマーによってAA, AB, BBの3つのダイマーを形成して細胞に作用する。これらは主に創傷治癒の過程において重要な作用を示すことが多くの種類の組織において確認されており、各A鎖とB鎖では細胞に対する生物学的作用が異なることが分かってきた。歯髄組織の創傷治癒過程においてもオートクリン、パラクリン作用が報告されているが、象牙芽細胞における細胞分化に対する各A鎖・B鎖の作用は未だ明確にされていない。今回我々は歯麺組織におけるPDGFの創傷治癒作用機序を調べるために、ラット切歯歯髄由来の培養細胞を用いて各A鎖、B鎖の象牙芽細胞への分化に対毛する影響を調べた結果、興味ある知見を得たので報告する。 (材料と方法)5週齢の雌SDラットの下顎切歯から歯髄を摘出し、酵素処理によって細胞を分離し、10%FCS、5mMβ-グリセロリン酸を含むαMEMにて20日間培養した。培養開始直後に50μg/mlの濃度のPDGF AA, AB, BBをそれぞれ添加し、48時間ごとの培地交換時にそれぞれの濃度のPDGFを添加し、これを20日間くり返した。培養後、細胞のALP活性、カルシウム含有量、オステオカルシン分泌量を測定し、また各細胞からmRNAを分離し、Dentin sialo protein(DSP)の発現をNorthern blot hybridizationによって検索した。また、培養細胞を中性ホルマリンにて固定後、ALPとvon kossa染色、オステオカルシンの免疫組織化学的染色とDSPmRNA発現を調べるためのin situ hybridizationを行った。P(結果と考察)培養後のALP活性、カルシウム含有量、オステオカルシン合成量はコントロールの細胞に比較してPDGF AB, BBを作用させた細胞においては著しく減弱し、PDGF AAを作用させた細胞ではわずかに減弱する程度であった。形態学的検索では石灰化結節数がコントロールの121.24±36.34/wellに対してAA処理細胞では108.0±19.44/well, AB処理細胞では22.5±5.20/well, BB処理細胞では17.6±3.08/wellであった。また、コントロールとAA処理細胞ではオステオカルシン陽性の石灰化結節周囲の細胞にDSP、RNAの発現が限局的に発現されており、AB, BB処理細胞では瀰漫性にDSP mRNAの発現が確解された。Northern blot hybridizationにおいてはDSP mRNAの発現はAA処理群ではコントロールに比較して減弱したが、AB, BBはともにコントロールに比較して発現が促進されていた。以上の結果から歯髄細胞の分化におけるPDGFの作用はA鎖とB鎖では異なることが示され、細胞分化にはA鎖よりむしろB鎖が重要であることが示唆された。本研究結果は歯髄組織の創傷治癒のメカニズムを解明するうえで有用な知見である。
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Research Products
(1 results)