Research Abstract |
大阪府老人大学講座の受講者1015名(平均年齢67.1歳,男性56.5%)に対して,日本語版Short-form Oral Health Impact Profile(OHIP-14)を用いてアンケート調査を行った.日本語版OHIP-14の質問項目には,機能の制限,身体的疼痛,心理的不快,身体的障害,社会的障害,心理的障害,ハンディキャップに関するものがそれぞれ2問ずつ計14問含まれている.これらの質問に対して,(1)全くない,(2)ほとんどない,(3)ときどきある,(4)しばしばある,(5)頻繁にあるの5段階で回答してもらい,(4)(5)と回答した項目数を,口腔に由来するQOLの問題点ありとして合計し,個人のスコアとした. OHIP-14の質問項目のうち,問題ありとした,すなわちQOLの低下を示した頻度が最も高かった項目は,口腔の問題による「食事の不快感(8.1%)」,次いで「人目を気にした(5.2%)」「ストレスを感じた(4.9%)」であった.全体としては,身体的疼痛,心理的不快の頻度が高く,社会的障害,ハンディキャップについては頻度が低かった. これらの各項目に問題ありとした者の割合は,全般的にはアメリカ白人,オーストラリア地方部,カナダ地方部より高く,オーストラリア都市部,カナダ都市部と同程度であり,アメリカ黒人,香港より低い値となった.また14項目の順位については,我々の日本のデータは,オーストラリア都市部(rs=0.89),アメリカ白人(rs=0.81),黒人(rs=0.87)のデータとは相関性が高かったが,カナダ地方部とは相関がみられなかった.各項目については,「会話に支障をきたした」はカナダ地方部より高く,「食事の不快感」はカナダ都市部より高く,「人目を気にした」は香港より高くなった.一方,「食事の中断」は香港より低かった.これらの理由としては,言葉の持つ概念や微妙な意味合いの違い,経済状況,社会保障制度や医療制度の違い,また人生に対する価値観,楽観的か悲観的かなど国民性の違いなどが考えられるが,今後の検討が必要である.
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