2002 Fiscal Year Annual Research Report
制吐剤の動注化学療法に及ぼす影響に関する基礎的研究
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13672087
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Research Institution | Hamamatsu University, School of Medicine |
Principal Investigator |
式守 道夫 浜松医科大学, 医学部附属病院, 講師 (70154193)
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Keywords | VX2vcarcinoma / CDDP / THP-ADM / antiemetics / granisetoron / azasetron / ondansetron / metoclopramide |
Research Abstract |
背景:当科でのTHP-ADM, CDDPおよびPEPを併用した術前動注化学療法(TPP療法)に関し,橋本ら(1993)は優れた臨床1次効果について報告した.当科の森は第21回日本頭頸部腫瘍学会で,stageIVの5年生存率が静注群で43.6%に対して動注群で73.3%であったと報告した.当科でのTPP療法の実験的検討から,先行投与薬剤THPが後続薬剤CDDPの特にリンパ節への組織移行性を高めることが分かった.しかし,当科の臨床的検討でgranisetron(GRN)導入後TPP療法の臨床1次効果が低下していた.そこで,TPP療法の臨床成績の機序を解明するため,制吐剤がCDDPの組織移行性に及ぼす影響について実験的に検討した. 対象ならびに方法:平均体重約3kgの雄性日本白色家兎の足背部に移植したVX2癌を対象とした.実験群では,大腿動脈よりTHP-ADM 1mg/kgをbolusで先行投与し,23.5時間後耳静脈より制吐剤を投与し,30分後に大腿動脈よりCDDP2mg/kgを動注した.対照群では,生食を投与した.CDDP投与30分後に移植腫瘍、膝窩リンパ節を摘出し,CDDP濃度を測定した.GRN実験後、家兎の購入先変更に伴い、再度同系統の対照群を用いてazasetron(AZA),ondansetron(OND)およびmetoclopramide(MCP)について実験を継続した. 結果:リンパ節内のCDDP濃度は,実験群GRN群では1.81±0.08μg/g,対照群では3.39±3.96μg/gで有意(p<0.05)に移行性が低下していた.引き続き行った他の制吐剤について,AZA群では2.22±0.79mcg/g, OND群では1.90±0.43mcg/g, MCP群では3.39±5.43mcg/g,対照群では2.31±11.5079mcg/gで有意差はなかった. 腫瘍に関しては,一定の傾向は認めなかった.これは,組織学的検討で腫瘍が化学療法に反応した結果血管が傷害され,CDDPの組織移行に影響を与えたことによると考えられた. 考察:実験的にもGRNがCDDPのリンパ節への移行性を低下させていることが明らかとなり,術前動注化学療法の臨床効果の低下の原因の1つと考えられた.他の制吐剤は実験的には影響を与えないであろうと考えられたが,臨床的検討は行われていない.
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