2002 Fiscal Year Annual Research Report
IκBキナーゼを標的にした口腔癌の老化誘導療法の可能性についての研究
Project/Area Number |
13672104
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
池邉 哲郎 熊本大学, 医学部, 助教授 (20202913)
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Keywords | IKK / 上皮分化 / 口腔癌 / 扁平上皮癌 / NF-κB |
Research Abstract |
平成13年度にひきつづき転写因子NF-κBの活性化をもたらす蛋白リン酸化酵素IKKαと扁平上皮癌細胞の分化(老化)との関係を分析した。その目的のためにIKKα発現ベクタープラスミドを作製し、培養扁平上皮癌細胞および正常上皮細胞に導入、発現させた。その結果、以下の知見を得た。 (1)培養扁平上皮癌細胞にIKKαを過剰発現させると上皮分化マーカーのインボルクリン、フィラグリンの発現が抑制されたが、正常細胞ではIKKαの効果は検出されなかった。IKKβにはこの効果はなく、IKKαが扁平上皮癌細胞の分化状態を規定する分子の一つであることが示唆された。(2)扁平上皮癌細胞を線維芽細胞が混入されたコラーゲンゲル上で培養すると、重層化し、しかも一部の細胞はゲル内に浸潤する像が得られた。癌細胞にIKKαを高発現させると、細胞の重層化が抑制されるとともにゲル内侵入細胞が増加した。(3)扁平上皮癌細胞をグルココルチコイドやIL-4で処理することによって転写因子NF-κBを抑制すると、癌浸潤に関わるプロテアーゼMMP-9やuPAの発現が抑制された。NF-κBを抑制すれば癌浸潤が抑制されることが示唆された。(4)IKKαを高発現した扁平上皮癌細胞はシスプラチンによる細胞死誘導に抵抗性であった。 以上により、IKKαを高発現した扁平上皮癌細胞は分化(老化)のプログラムが停止し、より浸潤しやすい能力を獲得することが考えられた。従ってIKKαは癌細胞の老化を進め、かつ浸潤能を低下させるための分子標的になりうることが示唆された。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] H.Nakayama, T.Ikebe, M.Beppu, K.Shirasuna: "High Expression Lavels of Nuclear Factor kB, IkB Kinase a and Akt Kinase in Squamous Cell Carcinoma of the Oral Cavity"Cancer. 92. 3037-3044 (2001)
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[Publications] M.Beppu, T.Ikebe, K.Shirasuna: "The inhibitory Effects of immunosuppressive factors, dexamethasone and interleukin-4, on NF-kB-mediated protease production by oral cancer"Biochimica et Biophysica Acta. 1586. 11-22 (2002)
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[Publications] F.Sandra, N.Matsuki, H.Takeuchi, T.Ikebe et al.: "TNF inhibited the apoptosis by activation of Akt serine/threonine kinase in the human head and neck squamous cell carcinoma"Cellular Signalling. 14. 771-778 (2002)