2002 Fiscal Year Annual Research Report
喫煙者と非喫煙者における歯周炎の病態の相違に対する疫学的検討
Project/Area Number |
13672172
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
尾崎 哲則 日本大学, 歯学部, 教授 (20194540)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 喜久 日本大学, 歯学部, 教授 (20192403)
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Keywords | 喫煙・非喫煙 / 歯周疾患検査 / スクリーニング / 唾液潜血反応 / イムノクロマトグラフ / 唾液中コチニン濃度 |
Research Abstract |
喫煙状況と歯周疾患罹患状態の関連性については、幾多の報告がある。しかし、疫学的に歯肉炎だけで評価した場合、喫煙者群と非喫煙者群には差がなく、むしろ喫煙者のほうが低い傾向にあることを申請者らも疫学的研究で得ている。さらに、申請者らは、「唾液潜血試験紙法」により、唾液中潜血反応の半定量化を行い歯周疾患の有病状況との関連性を調べたところ,喫煙群では歯周病の進行と潜血反応が大きくなる傾向が認められなかった。すなわち、喫煙者の歯周炎では、一般に考えられている歯周疾患の進行と異なり、炎症の進行に伴って必ずしも歯肉からの出血が増加しないと思われる。これらは、歯周組織における微小循環が、喫煙によって抑止され、その結果生じたものと考えられる。そこで、今回、肉眼的に比色を行う「唾液潜血試験紙法」に比べ、ヒト血液に対し特性が強くかつ定量性に優れており,便潜血反応試験用に近年開発され、昨年度検討を加えたイムノクロマト法も用い、喫煙者と非喫煙者で同程度歯周ポケットが存在する場合、どちらにどの程度唾液中の潜血があるかを測定し、間接的に歯周組織の微小循環に対する喫煙の影響を調査し、喫煙者と非喫煙者間で歯周炎の病態の相違を明らかにし、あわせて唾液中コチニン濃度など関連性について、成人男性204名を対象とし検討を加えた。 その結果、非喫煙群では歯周疾患の悪化に伴い唾液中の潜血量が増加する傾向にあったが,歯周炎に進行した喫煙群ではむしろ潜血量の少ないものが増える傾向にあった。また,唾液中のコチニン濃度により喫煙量を評価して,喫煙量と歯周疾患有病状況を比較検討したところ,喫煙が歯周疾患に及ぼす有意な影響を示すことができた。さらに,歯周疾患が軽症なものでは,唾液中のコチニン濃度と潜血量の間に関連性はなかったが,重症のものでは唾液中コチニン濃度が高いほど潜血量が減少する傾向が認められた。したがって,歯周組織局所の血液循環に喫煙の影響を強く受けたものが,歯周疾患をより進行させている可能性が示唆された。
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