Research Abstract |
【方法】実験動物には,生後7週齢のウイスター系雄性ラット100匹を用い,A群(拘束ストレス負荷群)とB群(非拘束群)の各群50匹ずつに分けた.動物の歯周組織に炎症性変化を惹起させる目的で,上顎右側第2臼歯(M2)の歯頚部にナイロン糸を結紮し,B群にはストレスを与えず,A群は糸挿入後,隔日間隔で金網による拘束を夜間12時間行った.血液検査として,血漿副腎皮質刺激ホルモン(ACTH),およびアドレナリン濃度測定を,実験開始直前および開始後2,4,16,8,10日目に行った.同時に屠殺も行い,通法に従い作製した組織切片を光学顕微鏡下で,M2根分岐部の歯周組織を組織学的,組織形態計測学的に検索した. 【結果】両群とも順調な体重増加が認められたが,A群ではストレス負荷後,低い体重増加を示した.血液検査では,A群のACTH,アドレナリン濃度が高い値を示し,また,胸腺の相対重量は有意に減少しており,A群でストレスに応答していることが推察された.組織学的には,A群のM2根分岐部における骨吸収がB群に比して進行しており,さらに,神経変性度をコード化し,歯根膜における神経線維の変性度合について検索した結果,コード数が高いほど,炎症性細胞が多くみられた. 【考察】以上の平成13年度の研究結果により,歯周病の進行にストレスが関与し,さらに,ストレスの影響の1つとして,病変部に神経原性炎症の惹起が関与しているものと示唆された.すなわち,拘束ストレスにより交感神経の活動が亢進することにより,神経末端部で神経ペプチドが分泌され,炎症性細胞が活性化されてその周囲に炎症性細胞を集積させる,神経原性炎症が生じ,本研究における実験的歯周炎の進行を増強したことが推測された.この所見をもとに,来年度は神経ペプタイドの1つであるサブスタンスPのレセプターの発現を検索していく予定である.
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