Research Abstract |
平成13年度の結果より,ラットにおいて拘束ストレスが,歯槽骨吸収を促進することが判明した.そこで,平成14年度は,より詳細に解明するため,歯槽骨周囲での神経ペプタイド受容体の発現を検索した. 【方法】実験動物にはウイスター系雄性ラット60匹を用いた.炎症性変化を惹起させるため,ラットの第2臼歯(M2)歯頚部に,縫合用糸を結紮した.その後,S群(拘束ストレス群)とN群(非拘束ストレス群)の2群に分けた。S群には実験期間中,毎夜12時間,金網による拘束ストレスを与えた.糸結紮後2,4,6,8,10日目に,各群5匹ずつ,末梢血を採取して血漿アドレナリン濃度を測定した.さらに,胸腺重量,胃潰瘍数を測定して,拘束ストレスの指標とした.また,上顎骨を摘出し,M2の近遠心方向の連続組織切片を作製した.組織切片は,H-E染色,神経ペプタイドの1つであるサブスタンスPレセプター(SPR)発現に対するin situ hybridization法,およびTRAP染色にて検索し,光学顕微鏡下で主としてM2根分岐部の歯周組織を組織学的,および組織形態計測学的に検索した. 【結果】平成13年度の結果と同様に,S群に胸腺の萎縮,血漿アドレナリン濃度の上昇,および胃潰瘍の発症が認められ,さらに,S群ではN群と比較して,ストレス負荷後8,10日目において,M2根分岐部歯槽骨の吸収が著明に認められた. SPRに関して,S群4日目以降において,N群と比較して著明にSPRのmRNA陽性細胞数が多かった.また,S群では2日目以降多くのTRAP陽性細胞が認められた.SPRのmRNA陽性細胞は歯槽骨周囲に発現しており,TRAP陽性細胞と同一の細胞であると思われる箇所も確認された. 【考察】これらより,拘束ストレス負荷状態では,SPRが骨周囲細胞に多く発現し,骨代謝細胞を活性化させ,歯槽骨吸収の促進に関与していることが示唆された.
|