2002 Fiscal Year Annual Research Report
重水素置換と共鳴ラマン分光法による生理的条件下の薬物結合に伴う核酸構造変化の検出
Project/Area Number |
13672248
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
外山 聡 東北大学, 大学院・薬学研究科, 助手 (60217560)
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Keywords | 選択的重水素化DNA / 共鳴ラマン分光 / 核酸構造 / 核酸-薬物相互作用 |
Research Abstract |
本研究の目的は、共鳴ラマン分光法と選択的同位元素ラベル法を組み合わせた、新規な構造解析法を用いて、生理的条件に近い希薄水溶液中で、薬物がDNAに結合した時に起こる構造変化を、個々の塩基レベルで追跡する方法を確立することである。共鳴ラマン分光法は、μM濃度でも核酸-薬物複合体のスペクトルが測定できる。さらに、通常のオリゴマーと、着目する1塩基だけを重水素置換したオリゴマーを用いて、同一条件で共鳴ラマンスペクトルを測定し、両者の差スペクトルを計算する。重水素置換した部位以外の状態は同じであるから、これらのスペクトルは互いに相殺し、差スペクトル上には、重水素置換した1塩基だけの情報が残る。昨年度、特定のグアニン塩基のイミダゾール環を8位を重水素ラベルしたDNAオリゴマーを合成する方法を開発し、また、差スペクトルの解析を行うための基礎的研究として、置換イミダゾールについて、重水素化した場合のスペクトル変化を詳細に解析した。 今年度は、グアノシンモデル化合物を用いて、8位重水素化グアニン環の振動モードの解析、「未置換体-重水素置換体」の差スペクトルからグアニン環の水素結合状態を決定する方法、さらに、実際に重水素置換オリゴマーを用いて、オリゴマー中の1つ1つのグアニン環の水素結合状態変化が解析できることを発表した。 Aureolic acid類に属する抗癌剤、Chromomycin A_3(CHR)について、そのDNAとの相互作用様式を調べた。NMRにより、(CHR)_2-Mg^<2+>とDNAの複合体の構造解析がなされている。一方、CHRはサブmM濃度で会合を起すこと、CHRとMg^<2+>の濃度比に依存して、(CHR)_2-Mg^<2+>錯体の構造が変わることも知られている。生理的条件に近い低[CHR]、低[CHR]/[Mg^<2+>]条件では、NMRで決定された構造とは異なる様式で、CHRがDNAに結合する事を示唆する結果を得た。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Akira Toyama: "Raman spectra and normal coordinate analysis of the N1-H and N3-H tautomers of 4-methylimidazole"The Journal of Physical Chemistry A. 106・14. 3403-3412 (2002)
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[Publications] Akira Toyama: "Assignments and hydrogen bonding sensitivity of UV resonance Raman bands of C8-deuterated guanine ring"Journal of Raman Spectroscopy. 33・9. 699-708 (2002)