2002 Fiscal Year Annual Research Report
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13672296
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
本間 浩 北里大学, 薬学部, 教授 (50190278)
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Keywords | D-アスパラギン酸 / テストステロン / Steroidogenic Acute Regulatory protein / Leydig細胞 / mLTC-1細胞 / グルタミン酸トランスポーター |
Research Abstract |
これまでに我々は、ラット精巣のLeydig細胞において、D-アスパラギン酸(D-Asp)がヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)によるテストステロン(Ts)の合成・分泌を促進することを見出してきた。すなわち、Leydig細胞の初代培養系において、培地内にhCGとともにD-Aspを加えて培養すると、培地内に分泌されるTsの量が増加する。この際、Leydig細胞内では、Steroidogenic Acute Regulatory Protein (StAR)とよばれるタンパク質のmRNA量とタンパク質量がともに増加していた。 このStARは、ステロイド産生性の細胞内にあって、ステロイド合成に必須のタンパク質である。ステロイド産生細胞内では、前駆体のコレステロールがミトコンドリア内膜に運ばれ、内膜に存在するステロイド側鎖切断酵素によってプレグネノロンに変換される。プレグネノロンはその後、小胞体内でTsへと代謝される。この過程のうち、コレステロールがミトコンドリア内膜に運ばれる段階がTs合成の律速段階であり、StARはこの段階を促進するタンパク質である。つまり、D-AspはStARの遺伝子発現を促進し、StARのタンパク質量を増加させてTsの合成・分泌を促進すると考えられる。また、D-AspのLeydig細胞内への取り込みを阻害すると、D-AspによるStARの遺伝子発現の促進が認められなくなることから、D-Aspは細胞内に取り込まれる必要があることが明らかになった。 昨年度において、mLTC-1(mouse Tumor Cell-1)細胞がLeydig細胞の良いモデルとなることを見出すことができた。すなわち、mLTC-1細胞の培養系にhCGの代わりとなる8-Br-cAMPとともにD-Aspを加えると、StARのタンパク質量が増加することが明らかになった。この際、D-Aspを細胞内に取り込むグルタミン酸トランスポーター(GluT)を(一過的に)発現させる必要があった。今年度は、D-Aspの取り込みの必要性をより明確にするために、mLTC-1細胞のGluT安定発現株を単離した。すなわち、CMV immediate early pomoter支配下にGlut遺伝子を挿入した、neomycin耐性遺伝子を有するplasmidをmLTC-1細胞に導入し、G418に耐性な細胞を単離した。いくつかの株は、確かにD-Aspを細胞内に効率よく取り込んだ。この安定発現株において、D-Aspは8-Br-cAMPによるStARのタンパク質量の増加を亢進させた。一方、親株のmLTC-1細胞では、D-Aspのこのような活性は認められなかった。以上のことから、D-Aspは細胞内に取り込まれ、StARの遺伝子発現を促進してステロイド合成を亢進することが明らかになった。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Lee, J.-A.et al.: "Localization, transport and uptake of D-aspartate in the rat adrenal and pituitary glands"Arch. Biochem. Biophys. 385. 242-249 (2001)
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[Publications] Long, Z. et al.: "Detemination of D-aspartate in cell culturing medium, within cells of MPT1 cell line and in rat blood by a column-switching high-performance liquid chromatographic method"J. Chromatogr. B. 761. 99-106 (2001)
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[Publications] Long, Z. et al.: "Cell density inversely regulates D-and L-aspartate levels in rat pheochromocytoma MPT1 cells"Arch. Biochem. Biophys. 404. 92-97 (2002)
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[Publications] Sekine, M. et al.: "Automated column-switching high-performance liquid chromatography system for quantifying N-methyl-D-and-L-aspartate"Anal. Biochem. 310. 114-121 (2002)
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[Publications] Homma, H: "D-Aspartate in the mammalian body"Viva Origino (Journal of the Society For the Study of the Origin and Evolution of Life). 30. 204-215 (2002)