脳・神経系におけるホスホリパーゼC-δlのストレス応答性とその意義に関する研究

2002 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 13672313
• Research Institution: Kyoto Pharmaceutical University
• Principal Investigator: 藤本 貞毅 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (80090182)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 下濱 俊 京都大学, 医学部, 助教授 (60235687) ; 谷野 浩子 京都薬科大学, 薬学部, 助手 (90298688) ; 長澤 一樹 京都薬科大学, 薬学部, 講師 (30228001)
• Keywords: ホストリパーゼC / アイソザイム / 酸化ストレス / レドックスシグナル / アクリロニトリル / ラット脳 / ラット心臓

Research Abstract

ホスファチジルイノシトール特異的ホスホリパーゼC(phospholipnse C : PLC)は、イノシトールリン脂質の分解を伴う数々の細胞応答に関与する重要な酵素である。本酵素は大別して、β、γ、δ、ε型の4種のisozymeの存在が認められている。申請者らは、これまでに、、isozymeの1つであるPLC-δlがアルツハイマー病(AD)脳において、ADに特徴的な病理像に異常に蓄積していることを認め、酸化ストレスとPLC-δlとの関連性を示唆してきた。標記研究課題に関連して、今年度は、ラットをhyperoxiaの環境下におくことにより、また、astrocytomaを誘発するとされるacrylonitril(ACN)をラットに経口摂収させることにより、脳内のPLC isozymeの変動を、心臓におけるそれと比較した。その結果、hyperoxia及びACN処置は心臓における過酸化脂質量を増大し、そのレベルは後者の方が大きかったが、いずれの場合も大脳皮質におけるレベルより小さく、脳における酸化ストレス抵抗性の低いことが碓認できた。ACN処置により大脳皮質細胞質分画のPLC-βl及び-δl並びに細胞質及び膜分画のPLC-γlレベルは上昇した。また、hyperoxia処置大脳皮質のPLC-βl及び-δlについてはACN処置の場合と同様の変動プロファイが認められたが、PLC-γlついては変動しなかった。一方、心臓においては、hyperoxiaにより総PLC-γl及び-δlレベルの変動は無いが、いずれも細胞質分画から膜分画への転移が起り、ACN処置ではPLC-δlレベルのみが細胞質及び膜の両分画で上昇した。このように、酸化ストレスに際して3種のPLC isozymeが応答するものの、その応答性は画一でなく、またストレスの程度並びに組織間でそれらの応答性が異なることが示唆された。

Research Products

• [Publications] Shun Shimohama et al.: "Differential subcellular localization of caspase family proteins in the adult rat brain"Neurosci.Lett.. 315. 125-128 (2001)
• [Publications] Hiroko Tanino et al.: "Alteration of phsphpolipase C isozymes in rat cerebral cortex through hyperoxia"Biol.Pharm.Bull.. 24(11). 1241-1245 (2001)
• [Publications] Shun Shimohama et al.: "Differential expression of rat brain caspase family proteins during developmment and aging"Biochem.Biophys.Res.Commun.. 289. 1063-1066 (2001)
• [Publications] Kazuki Nagasawa et al.: "Effects of hyperoxia and acrylonitrile on the phospholipase C isozyme protein levels in rat heart and brain"Life Sci.. (in press). (2003)