2002 Fiscal Year Annual Research Report
ストレス応答におけるチオレドキシン還元酵素の発現誘導と機能に関する解析
Project/Area Number |
13672345
|
Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
原 俊太郎 北里大学, 薬学部, 講師 (50222229)
|
Keywords | チオレドキシン還元酵素 / レドックス制御 / 転写因子 / NF-κB / ストレス応答 / カドミウム |
Research Abstract |
チオレドキシン還元酵素(TrxR)の3種類のアイソザイムのうち、細胞が種々のストレスに曝されると、TrxR1の発現のみが誘導されることが知られている。本年度は、ストレス応答におけるTrxRの機能を明らかにするために以下の解析を行った。 (1)ストレスによるTrxR1の発現誘導機構の解析 ウシ頸動脈血管内皮細胞(BAEC)をTNF-α、PMA+A23187、Cdで刺激すると、いずれの刺激においてもTrxR1mRNA量の増加が観察された。これらの刺激のうち、RNA合成阻害剤アクチノマイシンD存在下刺激を行ったところ、TNF-αで刺激した場合にのみTrxR1mRNAの分解が抑制されていることがわかった。一方、ヒトTrxR1遺伝子の5'-フランキング領域をルシフェラーゼ遺伝子に結合し作製したレポータージーンを、BAECに導入した後、細胞を刺激したところ、PMA+A23187、Cdの刺激ではともに転写活性の上昇が観察されたのに対し、TNF-α刺激では転写活性は変化しなかった。以上の結果から、ストレスによるTxR1遺伝子発現誘導には、mRNAの安定化、転写活性の上昇など、刺激の種類によりいくつかの経路が存在することが示された。 (2)TrxR1の過剰発現がストレス応答性転写因子の活性に及ぼす影響 昨年度の研究において、TrxR1はその還元活性を介し、ストレスにより活性化されるNF-κBを介した遺伝子発現を更に亢進することを示したが、本年度は、そのNF-κB活性化機構について検討した。その結果、TrxR1を過剰発現させても、NF-κBの阻害蛋白質IκBの分解や、NF-κBの核移行は変化しないことが明らかとなった。TrxR1は核内におけるNF-κBのDNA結合能を上昇させることにより、NF-κBの活性化を亢進するのではないかと予想された。また、TrxR1を過剰発現させた場合、NF-κBを介した遺伝子発現のみならず、AP-1を介した遺伝子発現も亢進することが示された。
|