2001 Fiscal Year Annual Research Report
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13672381
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
上野 光一 千葉大学, 大学院・薬学研究院, 教授 (60125903)
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Keywords | 環境ホルモン / フタル酸ジエチルヘキシル / プラスチック可塑剤 / ラット / 免疫 / 継世代的毒性 / 抗体産生能 / 遅延型アレルギー反応 |
Research Abstract |
内分泌撹乱化学物質であるフタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)はプラスチック可塑剤として広く用いられており、近年、PVC製輸液点滴セットから血中への溶出が報告されている物質である。一般に、内分泌系、免疫系および神経系は互いに複雑なフィードバック系を形成していると考えられているため、内分泌撹乱物質であるDEHPが免疫機能に対し、何らかの影響を及ぼすことは十分に考えられている。また内分泌撹乱化学物質の暴露が胎児期および新生児期である場合、その影響は生涯を通じての不可逆的反応となる可能性が示唆されている。 本年度の研究においては、ラットを用いて母体血中、胎盤内、胎仔内及び乳汁中のDEHP濃度を測定した。また、妊娠ラットのDEHPを出産後離乳まで連日経口投与し、その仔が成熟した後に抗体産生能をはじめとする免疫活性を測定した。その結果、以下のことがわかった。 1.PVC製輸液セットに可塑剤として含まれているDEHPは、Tween80存在下では約0.6mg/500mL溶出した。 2.妊娠中に摂取したDEHPは、母体血中では代謝されたMEHPとして存在しており、そのMEHPが胎仔中に移行することが明らかとなった。また、母乳中にもDEHP,MEHPが移行・蓄積されており、乳仔へ移行することが明らかとなった。 3.胎仔期から授乳期にかけてDEHPに暴露されたF_1は、成長後に免疫機能に影響を受けた。その影響は、性別や暴露期間によって大きく変化した。妊娠7日目からDEHPを投与した場合は、雌で抗体産生能の亢進傾向が、雄では抑制傾向が見られた。妊娠14日目からの投与では、F_1雄で抗体産生能の亢進傾向、DTH反応の抑制傾向及びT細胞幼弱化の抑制傾向が見られ、F_1雌では、抗体産生能の有意な抑制とDTH反応の有意な亢進及びT細胞幼弱化の有意な亢進がみられた。 4.このことは、Th1/Th2バランスが雄ではTh2に、雌ではTh1に傾いているためではないかと推察された。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 水谷義勝, 酒井明子, 上野光一, 中村智徳, 高橋英世, 矢野眞吾: "癌患者におけるモルヒネ製剤の使用状況と消化器副作用"日本病院薬剤師会雑誌. 53・2. 223-232 (2001)
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[Publications] S. Narimatsu, T. Arai, Y. Masubuchi, T. Horie, M. Hosokawa, K. Ueno, H. Kataoka, S. Yamamoto, T. Ishikawa, A. K. Cho: "Inactivation of Rat Cytochrome P450 2D Enzyme by Further Metabolite of 4-Hydroxypropranolol, the Major and Active Metabolite of Propranolol"Biol.Pharm.Bull.,. 24・8. 988-994 (2001)
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[Publications] K. Yamaura, K. Ogawa, T. Yonekawa, T. Nakamura, S. Yano, K. Ueno: "Inhibition of the antibody production by acetaminophen independent of liver injury in mice"Biol. Pharm. Bull.,. 25・2. 201-205 (2002)
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[Publications] Tomonori Nakamura, Akiko Sakai, Issei Isogami, Kazuhiro Noda, Koichi Ueno, Shingo Yano: "Abatement of Morphine-Induced Slowing in Gastrointestinal Transit by Dai-Kenchu-to, a Traditional Japanise Herbal Medicine"Jpn. J. Pharmacol.,. 88・2. 217-221 (2002)