2003 Fiscal Year Annual Research Report
急性炎症におけるG蛋白共役型プロテアーゼ受容体PAR-2の挙動に関する研究
Project/Area Number |
13672405
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
川畑 篤史 近畿大学, 薬学部, 助教授 (20177728)
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Keywords | PAR / 血管 / 内臓痛 / 痛み / プロテアーゼ / 肺上皮細胞 / プロスタグランジン / EDHF |
Research Abstract |
平成14年度に続き、15年度も急性炎症時に、protease-activated receptorsがどのような挙動を示すか、また、どのような機能の変化に関与するかを検討し、さらにその分子メカニズムについても調べた。 1)内臓痛モデルにおけるPAR-1,PAR-2アゴニストおよびプロテアーゼ阻害薬の効果について PAR-2の活性化ペプチド、活性化酵素をマウスの結腸内へ投与しても、内臓痛様の行動変化は観察されなかったが、カプサイシンの結腸内投与により誘起される内臓痛が、遅発性に増強された。一方、PAR-1活性化ペプチドの結腸内投与により、カプサイシン誘起内臓痛が抑制された。また、PAR-2アゴニストのカプサイシン誘起内臓痛に対する増強効果は、プロテアーゼ阻害薬であるメシル酸ナファモスタットにより阻止された。さらに、PAR-2ノックアウトマウスでは、PAR-2アゴニストの上記効果が認められなかった。これらのことより、結腸内腔表面に発現するPAR-2が活性化されると、恐らく、炎症が誘起され、それに伴って知覚神経末梢端に存在するカプサイシン受容体の感受性が増大し、カプサイシンによる内臓痛が促進されたものと考えられる。カプサイシン受容体が熱、酸のセンサーであることより、本研究結果は、炎症時における局所アシドーシスに基づく知覚神経の活性化に対して、PAR-2が促進的にはたらく可能性を示唆するものと考えられる。 2)炎症時に活性化されると考えられる血管内皮および平滑筋に存在するPARを介する血管収縮・弛緩反応機序の解析 エンドトキシンショック時には、血管内皮PARの誘導が見られ、これが、ショック時の血圧低下に関与しているか否かをこれまで検討してきた。本年度は、ラット摘出上腸間膜動脈血におけるPAR-2,PAR-1の活性化による収縮・弛緩反応の特徴を検討し、内皮に存在する両受容体の活性化によりNO, EDHFなどを介する弛緩反応が誘起されるが、PAR-1は平滑筋にも存在し、内皮除去あるいは内皮NO, EDHF遮断した状態では、平滑筋PAR-1を介する収縮がみられることを証明した。 3)培養ヒト肺上皮癌細胞においてPAR-2活性化により誘起される炎症シグナルについて ヒト肺胞上皮癌細胞A549において、PAR-2刺激により、Ca2+シグナル、ERKリン酸化およびプロスタグランジンE2の産生亢進が誘起されることを認め、それに関与する細胞内情報伝達機構を解析し、炎症との関係についての示唆を得た。 本年度は、当初計画したアジュバント関節炎モデルラットでのPAR発現変化についても検討を行ったが、positiveな結果は得られなかった。しかし、上述のように、当初予想しなかったようなPARと炎症の関係についての新たな知見を見出すことができた。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Kawabata, A. et al.: "Distinct roles for protease-activated receptors 1 and 2 in vasomotor modulation in rat superior mesenteric artery"Cardiovasc. Res.. 61. 683-692 (2004)
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[Publications] Kawabata, A. et al.: "Involvement of EDHF in the hypotension and increased gastric mucosal blood flow caused by PAR-2 activation in rats"Br.J.Pharmacol.. 140. 247-254 (2003)
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[Publications] 川畑篤史, 河尾直之: "Protease-activated receptorsと炎症"BIO Clinica. 18. 551-555 (2003)
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[Publications] Kawao, N. et al.: "Modulation of capsaicin-evoked visceral pain and referred hyperalgesia by protease-activated receptors 1 and 2"J.Pharmacol.Sci.. 94(In press). (2004)