2001 Fiscal Year Annual Research Report
α1-酸性糖蛋白の結合部位特異的糖鎖構造の病態変化とその生理的意義
Project/Area Number |
13672433
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
松本 宏治郎 東邦大学, 薬学部, 教授 (00095647)
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Keywords | α1-酸性糖蛋白 / 糖鎖 / 糖鎖結合部位特異的糖鎖構造 / 糖尿病 / 炎症 |
Research Abstract |
1.患者血清試料中α1-酸性糖蛋白(AGP)の糖鎖構造解析 健常人、血糖とHbA_<1c>高値の糖尿病患者およびCRP高値の炎症患者血清からAGPを精製し、AGP上糖鎖構造をMALDI-TOFMSとexo-glycosidase消化を組合わせて解析した。その結果、糖尿病では、患者間での変化には一定の傾向が見られず、患者間の病態の相違が考えられた。一方、炎症患者由来AGP上糖鎖構造は健常人由来血清と比較して、二本鎖糖鎖の増加とα1-3フコシル化の亢進が見られた。この結果は、レクチン親和性電気泳動法によるConA結合量とAAL結合量が増加するという従来の報告を支持する結果であり、MALDI-TOFMSを用いた解析が、より詳細で高感度かつ十分な解析能力を持つことを示している(投稿準備中)。現在、それらAGP上の糖鎖結合部位特異的糖鎖構造解析を行っている。 2.IL-1β刺激によるヒト肝癌細胞株HuH-7の分泌するAGP糖鎖構造変化の解析 炎症患者血清中のAGPに見られるような糖鎖構造変化のメカニズムを解析するために、in vitroの炎症モデルであるHuH-7細胞のIL-1β刺激により分泌されるAGPの糖鎖結合部位特異的糖鎖構造解析を行った。HuH-7細胞の分泌するAGP上の糖鎖は二本鎖、三本鎖、四本鎖から構成され、ポリラクトサミン構造やα1-6フコースは見られなかった。5カ所ある糖鎖結合部位のうちN末側の2カ所(site I,II)には三本鎖が優位に発現していた。IL-1β刺激により糖鎖構造の結合部位特異性には変化が見られなかったが、すべての糖鎖結合部位において、三本鎖および四本鎖上のα1-3フコシル化の亢進が見られた。以上の結果から、炎症時にみられるsLe^x構造の増加は、すべての結合部位におけるα1-3フコシル化の増加によるものであることが示唆された(2001年生化学会大会にて発表)。現在、IL-6や高濃度のグルコース、糖化アルブミン共存下で、培養上清中に分泌されるAGPについて糖鎖構造解析を行っている。次年度は、このフコシル化亢進のメカニズムを、糖転移酵素やシグナル伝達系を中心に解析する予定である。
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