2002 Fiscal Year Annual Research Report
α_1-酸性糖蛋白の結合部位特異的糖鎖構造の病態変化とその生理的意義
Project/Area Number |
13672433
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
松本 宏治郎 東邦大学, 薬学部, 教授 (00095647)
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Keywords | α_1-酸性糖蛋白 / 糖鎖 / 炎症 / サイトカイン |
Research Abstract |
急性炎症患者血清中α_1-酸性糖蛋白(AGP)の糖鎖構造をMALDI-TOFMSで解析した結果、2本鎖複合型糖鎖の増加および3本鎖と4本鎖にα1-3フコシル化(sialyl Lewis X : sLeX)糖鎖の増加が観察された。そこで、肝癌細胞株で細胞表面にsLeXを高発現しているHepG2と低発現のHuH7で培養上清の糖蛋白の糖鎖構造を比較した。HepG2細胞の培養上清を二次元電気泳動で分離し、抗sLeX抗体によるウエスタンブロットで検出される糖蛋白をIn Gel Digestion-Peptide Mass Fingerprint法で解析した結果、Transferrin、α_1-Antitrypsin、α2-HS-glycoprotein、β_2-Glycoproteinと同定された。HuH-7細胞からは抗sLeX抗体に反応する蛋白が検出されなかった。また、HepG2細胞のα1-3Fucosyltransferase活性は、HuH7と比べて、Ga1β1-4GlcNAcに対して約10倍、Neu5Ac α2-3Ga1β1-4GlcNAcに対して約40倍高値であった。 炎症時の糖鎖構造変化の機構を解明するために、HuH7細胞を48穴プレートで培養してホルマリン固定後、抗sLeX抗体で細胞表面の糖鎖変化を解析する方法を開発し、各種サイトカインやシグナル伝達機構を解析した。細胞表面のsLeX発現は、AGPのsLeX発現と同様に炎症性サイトカインであるIL-1βで強く増強され、IL-6でも弱い増強効果が認められたが、TNF-αやIFN-γによる影響は見られなかった。IL-1βによるsLeX発現増強は、抗炎症薬であるアスピリンやデキサメタゾンで抑制された。また、TGF-βもIL-1βほどではないが、sLeXの発現を増強させた。一方、プロテインキナーゼC(PKC)活性化剤であるPMAによりsLeX発現が増強され、PKC阻害剤であるStaurosporineやH-7が発現を抑制すること、PKA活性化剤Forskolin、チロシンキナーゼ阻害剤Herbimycin A、IP_3-キナーゼ阻害剤Wortmanninで影響を受けないこと、ホスファターゼ阻害剤オカダ酸で発現が増強することが明らかとなった。以上の結果から、IL-1βあるいはPKCが関与して、NF-κBによる転写調節がsLeX発現に重要であることが示唆された。 次年度は炎症時のsLeX発現増強の生理的意義を検討する予定である。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] K.Higai, K.SHibukawa, S.Muto, K.Matsumoto: "Targeted Proteo-glycomics analysis of sialyl Lewis X antigen expressing glycoproteins Secreted by human hepatoma cell line"Anal. Sci.. 19. 85-92 (2003)
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[Publications] K.Higai, Y.Azuma, Y.Aoki, K.Matsumoto: "Altered glycosylation of α_1-acid glycoprotein in patients with inflammation and diabetes mellitus"Clin. Chim.. Acta. 329. 117-125 (2003)