2003 Fiscal Year Annual Research Report
α1-酸性糖蛋白の結合部位特異的糖鎖構造の病態変化とその臨床的意義
Project/Area Number |
13672433
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
松本 宏治郎 東邦大学, 薬学部, 教授 (00095647)
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Keywords | α_1-酸性糖蛋白 / フコシル化 / 炎症 / Asn結合型糖鎖 / MALDI-TOFMS / シアリルルイスX |
Research Abstract |
急性期蛋白であるα_1-酸性糖蛋白(AGP)は、炎症時に血中濃度が増加するだけでなく糖鎖構造も変化する。AGPは1分子中の5ヵ所のAsnに結合した二〜四本鎖の複合型糖鎖持つことから、急性と慢性炎症患者血清中AGPの糖鎖結合部位別に糖鎖構造の解析を行った(第76回日本生化学会および第124回日本薬学会にて発表)。血清試料から精製したAGPをGlu-Cでペプチドに断片化し、Site IからVの5種の糖ペプチドを逆相HPLCで単離した後、Asn結合型糖鎖をN-Glycanaseで遊離させ、Sialidase消化して得られる中性糖鎖をMALDI-TOFMSで定量した。 健常人の血清中AGPの糖鎖は、糖鎖結合部位間で顕著な差異があり、Site Iには三本鎖、Site IIには二本鎖と三本鎖が多く、四本鎖はSite IIIからVにのみ存在していた。また、α1,3-フコシル化糖鎖(Sialyl Lewis X : SLeX)はすべてのSiteにみられたが、三本鎖と四本鎖糖鎖が多いSite IIIからIVで多くみられた。急性炎症患者の血清中AGPは、糖鎖結合部位間での分岐糖鎖の分布には健常人と質的差異がみられなかったが、二本鎖の増加がSite IIを除くすべてにみられ、三本鎖の減少はSite IとIIで、四本鎖の減少はSiteIVとVでみられた。また、急性炎症ではα1,3-フコシル化糖鎖がすべてのSiteで増加しており、特に三本鎖や四本鎖の多いSiteIIIからVでの増加が顕著であった。慢性炎症でも同様な糖鎖変化が認められたが、急性炎症ほど顕著ではなかった。これらの結果は、炎症性サイトカインがフコース転移酵素遺伝子の転写調節に関与していることが推定されるが、分岐糖鎖の分布の糖鎖結合部位特異性や炎症での二本鎖糖鎖の増加については更に検討する必要がある。 また、SLeXの機能を明らかにするために、ヒト肝癌細胞株HepG2培養上清から精製したSLeXを高発現する糖蛋白を固相化したプレートを作成し、Sialidase処理したNK細胞の刺激を行った。SLeX刺激したNK細胞の細胞内リン酸化蛋白を抗Tyr-リン酸化抗体を用いるウエスタンブロット法で検出した結果、17kDa付近にTyr-リン酸化蛋白の増加が認められた(未発表)。
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