Research Abstract |
対照群である健常な子どもの被共感体験の特徴とその背景を明らかにするために,子どもが自分のことを「わかって欲しい」と思う重要他者に関する調査を行って解析した。 1.対象 東北地方の県庁所在地に在住する小学5年生から高校3年生までの児童・生徒2421名を対象とした。 2.調査方法 調査は自記式質問紙を用いて行った。「あなたは誰に自分のことをわかってもらいたいと思いますか」という質問に対して,父親,母親,きょうだい,友だち,学校の先生の5つの対象を挙げ,1から5までの順位をつけてもらった。得られた結果は順位尺度として得点化しSPSS 11.5Jによって統計解析を行った。 3.結果 有効回答は,小学生262名,中学生482名,高校生548名から得られた。 (1)小学生 小学生では,5対象の順位付けのKendallの一致係数(W)は0.123(P=0.00)で順位付けに一致性が認められた。一番わかってほしいのは母親であり,以下,友だち,父親,きょうだい,先生の順であった。5対象間で順位を多重比較したところ,友だちと父親の順位には有意差がなく,他の対象間比較では有意な順位の差が認められた。 (2)中学生 中学生では,W=0.219(P=0.00)であり,順位付けに一致性があった。各対象の順位は小学生と全く同じであったが,多重比較では,母親と友だちの順位に有意差はなく,他の対象間比較では有意差がみられた。 (3)高校生 高校生では,W=0.364(P=0.00)であり,順位性に一致性があった。一番わかってほしいのは友だちであり,ついで母親,父親,きょうだい,先生の順であった。多重比較では,友だちと母親の順位には有意差がなく,他の対象間比較では有意な順位の差が認められた。 (4)小学生,中学生,高校生の3群間の比較 対象ごとに小学生,中学生,高校生間の順位を比較したところ,友だちについては小学生と中学生の間で有意な順位の差があり(P=0.011),小学生の方がより友だちにわかってもらいたいと思っていた。中学生と高校生間では,高校生の方がきょうだい(P=0.005)および友だち(P=0.007)にわかってもらいたいと思っていた。また,先生については高校生よりも中学生の方が先生にわかってもらいたいと思っていた(P=0.000)。さらに小学生と高校生の間では、小学生の方が友だち(P=0.000)および先生(P=0.000)にわかってもらいたいと思っていた。母親,父親については学年間で差はみられなかった。
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