2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13672496
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Research Institution | TOHOKU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
塩飽 仁 東北大学, 医学部, 教授 (50250808)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠藤 芳子 山形県立保健医療大学, 保健医療学部, 講師 (20299788)
佐藤 幸子 山形大学, 医学部, 助教授 (30299789)
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Keywords | 神経症 / 子ども / 共感 / アレキシサイミア / 親子関係 / 世代間伝播 |
Research Abstract |
1.神経症患児群の調査実施 神経症患児群について,調査協力病院の小児科に通院している小学5年生から高校3年生までの神経症と診断された児童・生徒15名とその父親,母親を対象とした調査を行った。調査は,前年度までに調査を実施した対照群と同様に,親用の共感経験尺度改訂版,アレキシサイミア尺度であるThe Japanese Versions of The 20-Item Toronto Alexithymia Scale-20(日本版)および児童用共感経験尺度改訂版を用いた。 2.神経症患児群と対照群における子どもの共感経験と親の共感経験および感情の言語化の比較検討 神経症患児群の調査では有効回答が9組の親子から得られ,その結果を健康な子どもの群である対照群の230組の結果と比較した。 (1)子どもの共感経験の比較:父親,母親,きょうだい,先生,友達に対する子どもの共感経験を2群で比較したところ,両群間に有意な差はなく,子どもの共感経験は同程度であると考えられた。 (2)父親の共感経験の比較:父親の他者に対する共感経験では両群間に有意な差はなかった。 (3)父親のアレキシサイミア傾向の比較:父親のアレキシサイミア(自分の感情を言語化することがうまくできない)傾向の比較では,神経症患児群の父親の方が有意にこの傾向が強いことが明らかになった(P=0.007)。 (4)母親の共感経験の比較:母親の他者に対する共感経験の比較では,神経症患児群の母親の方が共感経験が少ない傾向にあることがわかった(P=0.067)。 (5)母親のアレキシサイミア傾向の比較:母親のアレキシサイミア傾向の比較では,神経症患児群の母親の方が有意にこの傾向が強いことが明らかになった(P=0.01)。 3.研究成果のまとめ 今回の研究により,子どもの神経症発症に関わる要因として親のアレキシサイミア傾向が大きく関与していることが判明した。この傾向が親の共感経験を少なくさせ,また子どもはそのような親に育てられるがゆえに他者との情緒的交流が阻害され,これらが子どもの神経症発症にかかわる危険因子になるという世代間伝播が存在すると考えられた。ただし神経症患児における共感体験は健常な子どもと同程度であり,それは親とのかかわりによるよりも友達との交流に支えられていると推察された。
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