2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13680003
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吉岡 斉 九州大学, 大学院・比較社会文化研究院, 教授 (30174890)
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Keywords | 人工透析 / 腎不全 / 腎移植 / 医療費 / 医療保険 / 医療政策 / 医療史 |
Research Abstract |
この研究の目的は、日本における人工透析技術の開発利用の推移について、国際比較の観点を重視しつつ、社会史的な見取り図を描くことである。将来的には、このパイロットスタディーを土台として、医療関係者を巻き込んだ共同研究に発展させたいと考えている。 本年度は、3年間の研究期間の最終年度にあたる。昨年度にひきつづき、内外の基本的な文献・資料について、調査・収集を進めてきた。具休的には、次のような作業を行った。第1に、社団法人全国腎臓病協議会が、社団法人日本透析医会および財団法人統計研究会の協力を得て毎年度発表している「血液透析患者実態報告書」について、できる限り長期にわたってサーベイを行った。第2に、日本透析医会および日本腎臓病学会が発行している和文・欧文の専門雑誌にや、他の医学雑誌(『腎と透析』、『メディカル・エンジニアリング』など)に掲載される人工透析および腎移植の社会史に関する記事を分析・評価した。第3に、日本透析医会等の年会・研究会等に出席し、人工透析および腎移植の社会史に関連する報告を分析・評価した。第4に、欧米の人工透析および腎移植に関する統計データおよび図書・論文について分析・評価した。第5に、内外の透析医療関係者に対するヒアリングを行った。 今年度の研究においてとくに重視したのは、人工透析医療の医療費削減に関する取組みの歴史と実態に関する調査である。厚生労働省は国民医療費抑制と患者自己負担率増大の方向へ向けて、さまざまの政策措置を講じている。人工透析患者はすでに24万人に達しており、1人500万円で勘定しても1兆2000億円の負担となっている。その大部分は患者負担ではない。診療報酬低減政策は現在進行中であり、それに対応して医療機関・医療機器メーカーは、コスト削減努力を進めている。ダイアライザーの高効率化・再利用化はその代表的な試みである。また現状では患者自己負担はわずかであるが、その増大へ向けての準備作業が進められている。それを容易にするための理論的根拠となるのが、「生活習慣病」概念である。患者団体は医療機関との連携のもとで、国民医療費抑制と患者自己負担率増大の双方に強く反対し、その進展速度を遅らせてきたが、医療保険破綻のおそれが高い以上、支出可能なコストの範囲内での最適医療について、具体的政策を構想することが必要となっている。そうした問題意識にたって、今年度の調査を進めた。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 吉岡斉: "予防原則思想の発展を目指して"環境ホルモン. 3. 8-18 (2003)
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[Publications] 吉岡斉: "原子力政策と予防原則-高速増殖炉開発政策を中心に"環境ホルモン. 3. 43-62 (2003)
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[Publications] 吉岡やよい, 吉岡斉: "「生活習慣病」の政治学"環境ホルモン. 4. 137-149 (2004)