2002 Fiscal Year Annual Research Report
脳の酸化的ストレスとシグナル伝達系に及ぼす運動の影響について
Project/Area Number |
13680068
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Research Institution | Osaka Gakuin University |
Principal Investigator |
角田 聡 大阪学院大学, 経済学部, 教授 (10158983)
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Keywords | 運動 / 脳 / 酸化ストレス / 4-ヒドロキシノネナール / チオレドキシン / レドックス |
Research Abstract |
【目的と方法】マウスの一過性の運動(20m/min,60分間のトレッドミル走)による脳組織の酸化ストレスをタンパク質の酸化的生成物である4-ヒドロキシノネナール(4-HNE)を指標として運動後経時的に検討した。さらに,運動による酸化ストレスがレドックス調節タンパク質のチオレドキシン(TRX)発現に及ぼす影響についても検討した。4-HNEとTRXは運動前,運動直後,運動後3時間,6時間,12時間,24時間,48時間の小脳を除いた脳組織をLysis bufferによってホモジネイトし,タンパク質画分をSDS-PAGEによって電気泳動した後,ウエスタンブロットによって分析した。【結果と考察】4-HNE修飾タンパク質は分子量27kDaと45kDa付近のタンパク質の発現が大きく,両者の発現量は運動後漸増傾向を示し,運動後12時間に顕著な増加が認められた。しかし,運動前に比べて有意な増加ではなかった。その後24時間,48時間後には運動前値へ回復する傾向がみられた。脳TRX発現量は運動後低下傾向を示し,48時間後には有意な低下(P<0.05)を示した。これらの結果から,一過性の運動では運動後に脳のタンパク質の酸化修飾が亢進する可能性が示唆され,脳への酸化ストレスの指標としてタンパク質の酸化修飾を反映する4-HNEの分析が有用であると考えられる。4-HNE修飾タンパク質は運動後12時間に遅れて出現することが明らかになった。また,脳では分子量27kDaと45kDa付近のタンパク質が酸化修飾を受けやすい。脳TRX発現量が運動後48時間まで減少した機序は明らかではないが,コルチコステロンレセプターの活性化や抗酸化作用などの細胞内レドックス調節によって生成された酸化型TRXが細胞外へ流出した可能性も考えられる。今後運動によるTRX発現や代謝についての詳細な検討が必要である。
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