2003 Fiscal Year Annual Research Report
多就業農業の存立形態とその農村コミュニティ維持機能に関する地理学的研究
Project/Area Number |
13680079
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
山本 充 埼玉大学, 教養学部, 助教授 (60230588)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊地 俊夫 東京都立大学, 理学研究科, 助教授 (50169827)
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Keywords | 多就業農業 / 持続性 / 農村コミュニティ / 水稲作農業 |
Research Abstract |
まず、農業と農外就業を複合させる多就業農業の存在と農村人口の動向との関係を検討した。近年の日本における農業人口の減少には地域的な差異がみられ、北海道や西南日本といった周辺地域と中央高地において減少率が高く、農業労働力においても同様の傾向がみられた。こうした減少率の高い地域では、専業農家率も高く、農業人口減少率と専業農家率には正の相関関係がある。このことから、専業農家率の低い地域、すなわち、多就業農業が成立している地域においては、農業人口の減少率が低いこと、多就業農業が農業人口の減少を抑制し、ひいては農村コミュニティの維持に貢献している可能性があることが示唆される。 次に、多就業農業がみられる地域の農業経営と地域的条件から多就業農業の存立形態とその分布を検討した結果、3つの類型の存在が明らかとなった。第1の類型は、日本海沿岸平野の水稲作地域における多就業農業である。ここでは水稲作の機械化の進展と圃場整備により省力が進展し、一方で、モータリゼーションの進展や工場の進出によって就業機会が増加し、農外就業が進展した。農家は農外収入に依存しつつも、水田を維持し、農村景観は維持されている。第2のタイプの多就業農業は水稲作に適さない山地地域にみられる。ここでは有畜農業が営まれ、その低生産性ゆえに林業や建設業、観光などの農外就業に依存せざるを得ない。公共部門や観光業が存在しない限り、この地域の農村人口を維持することは困難である。第3のタイプの多就業農業は、大都市のアーバンフリンジにみられる。ここでは、野菜や花卉などが都市市場向けに栽培される一方で、通勤や不動産経営などの農外就業を取り込んでいる。安定した農外収入を基盤として農業にも投資がおこなわれ、農業と農村コミュニティ、そして農地の維持がなされている。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 山本 充, 菊地俊夫: "ドイツ・バイエルン州における農家民宿をともなうプリーリアクティビティの展開(その1)"日本地理学会発表要旨集. 64. 137 (2003)
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[Publications] 菊地俊夫, 山本 充: "ドイツ・バイエルン州における農家民宿をともなうプリーリアクティビティの展開(その2)"日本地理学会発表要旨集. 64. 138 (2003)
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[Publications] 山本 充: "市場経済化の進展に伴うプラハの都市構造の変化"地域研究. 44. 25-38 (2003)
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[Publications] 菊地俊夫: "オーストラリア農業の新しい動向"歴史と地理. 563. 32-41 (2003)