2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13680086
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
野澤 秀樹 九州大学, 人文科学研究院, 教授 (00036998)
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Keywords | プロブレマティーク / クリーズ(危機) / C.ラフェスタン / 地理学の危機 / 地理学の専門分化 / Herodote / Y.ラコスト / 空間の戦略的科学 |
Research Abstract |
現代フランス語圏人文地理学の学的構造を検討するにあたって、まず問題となるキータームは、プロブレマティーク(問題構制)とクリーズ(危機)であろう。前者については平成13年度にとりあげ、具体的にはクロード・ラフェスタンの地理学認識論を検討した。平成14年度は主として後者「地理学の危機」をとりあげた。フランスを代表する思想雑誌である『パンセ』(No.194,1977)に地理学の危機が特集に組まれ、ジャン・ドレッシュ、ジャン・シャイブリンクらが論考を寄せている。地理学の危機に関してはさまざまな内容があるが、総合的視点が求められる環境問題や社会現象にたいして、もともとそうした視点に立っていた地理学が専門分化の方向にあること、また地理学の科学の有効性、教育的価値、社会経済的効力などへの疑問とともに、地理学の認識論の欠如が指摘されている。 こうした危機意識は批判的な地理学雑誌の発刊を促すHerodote(1976)、EspaceTemps(1975)などがそれである。なぜHerodoteが創刊されるのか理由を説く、「地理学の危機と危機の地理学」の論考は、イーヴ・ラコストに率いられたパリ・ヴァンセンヌ校地理学教室の数年に渡る議論の結果である。地理学教育の危機、地理学が権力をもっている人々にとって強力な道具となることの隠蔽。「地理学はまず戦争するのに役立ち、国家装置のその権威を行使する人々とよりよく防御するために領域を組織化するのに役立つ」との名言が発せられる。こうして地理学者間の認識論的議論やプロブレマティークについての欠如が指摘される一方、生物圏の破壊、大都市の膨張、人間の不平等の拡大などグローバルな危機と差異化の形態といった地理学の根本的な特徴が表出される。ラコストは地理学を空間の戦略的科学と位置付け、その認識と方法と問題を論じ80年代90年代の地理学に大きな影響を与えている。
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Research Products
(1 results)