2002 Fiscal Year Annual Research Report
戦前のわが国における町村営電気事業の成立過程に関する地理学的研究
Project/Area Number |
13680087
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Research Institution | Takasaki City University of Economics |
Principal Investigator |
西野 寿章 高崎経済大学, 地域政策学部, 教授 (40208202)
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Keywords | 戦前 / 電気事業 / 町営 / 村営 / 社会資本 / 成立過程 / 岐阜県 / 長野県 |
Research Abstract |
本研究2年目の平成14年度は、13年度に引き続き、町村営電気事業の成立過程を明らかにするために、13年度に資料の存在を確認できた岐阜県宮村、同東白川村、同加子母村、石川県鶴来町、鹿児島県知名町、長野県駒ヶ根市に出かけて、資料収集および聞き取り調査を実施したほか、国立国会図書館、秋田県立図書館、岐阜県図書館、宮崎県立図書館、沖縄県立図書館で電気事業関係統計、市町村史等、町村営電気関連資料の収集を行った。 岐阜県宮村は13年度に引き続いて資料調査を実施し、村営電気を知る古老に聞き取り調査も実施した。宮村では、村営電気設立に際しての全村民の寄付金台帳、課税台帳が保存されており、その分析から地主・小作間における寄付金の応分配分が行われていたことが判明した。これは、大正時代の地域社会資本整備に、地域住民がどのように対応したのかを知る手掛かりとして重要な発見であると考えている。また長野県駒ヶ根市には旧中沢村営電気の関係資料が保存されており、資料収集の結果、部落毎の共有林の運用益が村営電気の創業資金となっていることが判明し、大正時代における山村の経済構造との関連から電気事業の成立条件を研究する必要性を認識した。そのほかの町村では、断片的な資料収集に留まったが、秋田県立図書館で収集した同県横手町ほか4町村組合電気事業は、地域で設立準備が行われ、知事も許可していたのにもかかわらず、逓信省が民営電灯会社の先行営業を理由に不許可とした例として注目される。 今年度の調査から、町村営電気事業の性格には多様性のあったことが伺われ、最終年度は資料未収町村での資料収集を行いつつ、この性格の多様性を形成している背景分析を進めることとしたい。 なお、平成14年4月20日、経済地理学会中部支部例会において、平成13年度の研究成果をふまえて、「戦前の岐阜県における公営電気事業と民営電気事業の地域分業構造」と題して研究発表を行った。
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