2002 Fiscal Year Annual Research Report
産業集積地域におけるイノベーション形成に関する比較実証研究
Project/Area Number |
13680091
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
山本 健兒 法政大学, 経済学部, 教授 (50136355)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松橋 公治 明治大学, 文学部, 教授 (30165849)
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Keywords | 産業集積地域 / イノベーション / 暗黙知 / 知識創造 / コード化された知識 / ミリュー |
Research Abstract |
本年度の研究実績の一つは、産業集積と知識創造に関する、近年の議論のうち、北欧の経済地理学者Maskell & Malmbergの主張を批判的に再検討した結果を、人文地理学会大会での招待講演(特別研究発表)で報告したことにある。彼らは、イノベーションの基盤を知識創造に見て取り、これが暗黙知の共有・伝達によってなされるという側面に焦点を当てて空間的近接性が重要だとしている。この見解に対して、次のような諭点が提起される。 ・知識と情報の概念的識別がなされていない。 ・知識を暗黙知とコード化された知識に截然と分割する二元論的理解は不適切である。 ・人間は移動しうるがゆえに、暗黙知といえども特定の場所に固定化されるとは限らない。 ・イノベーション形成がなされるということは、たとえ当初は暗黙知が重要であったとしても、その内容がコード化されることを意味する。 ・コード化された知識が遍在化するとは限らない。コード化された新しい知識を学ぶためには、それを我が物としうるための知識の蓄積が必要である。 ・イノベーションの形成が知識創造に依存していることは確かだが、知識創造は暗黙知の創造だけを意味するわけではなく、産業集積を前提とするものではない。産業集積は知識創造を自動化するものではない。 ・むしろ、イノベーションにつながる知識創造は、産業集積の外部世界とのつながりを積極的に構築する企業のほうが活発に行う。 ・しかし、産業集積は知識創造にとって無意味ではない。外部世界とのつながりを積極的に構築する諸企業が、同時に産業集積内で相互交流を活発に重わる場合に豊かな知識創造が行われる。 以上の成果のほかに、本年度も、諏訪・岡谷と山梨県の中小企業経営者に、イノベーション形成に関するヒヤリングを実施した。その成果の一部は、上記の人文地理学会大会報告に生かされている。
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Research Products
(1 results)