2001 Fiscal Year Annual Research Report
中部日本の山岳地域における最終氷期の遺存植生の検出
Project/Area Number |
13680099
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
沖津 進 千葉大学, 園芸学部, 教授 (70169209)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
百原 新 千葉大学, 園芸学部, 助教授 (00250150)
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Keywords | 遺存植生 / 最終氷期 / 中部日本 / 植生変遷 / バラモミ節樹木 / 更新動態 / チョウセンゴヨウ / 大陸要素 |
Research Abstract |
本研究の主な目的は,中部日本の山岳地域において,最終氷期には広く分布したものの現在は分布を縮小し,遺存的に点在している植生(遺存植生)を見いだし,分布図にまとめることにある。平成13年度は遺存植生の検出方法の確立,野外調査,文献レビューを行った。 中部日本の山岳地域では,遺存植生と考えられるものには次のような特徴がみられる;周囲の植生と異なる相観や種組成のものが限定分布している,植生の構造から見てある程度持続的に存在している,種類組成に大陸的植物を多く含む,分布立地は通常の植生の成立が困難な場所である。野外調査については,奥秩父山地でサワラおよびサワグルミ林の更新・維持機構を明らかにした。富士山ではシラベ実生の動態を蘚苔類群落との関わりで検討し,植生変遷のメカニズムを考察した。上越国境では平ケ岳湿原乾燥化の実態を調査し,ハイマツからチシマザサへと移り変わるメカニズムを整理した。さらに,花粉化石や堆積物の解析をおこない,サルスベリ属花粉やCathaya花粉など,植生変遷を理解する上で重要な分類群の分布変遷についての具体的情報を得た。文献レビューでは,ブナ属樹木の起源と進化,新潟平野周辺の環境変遷,極東ロシアにおけるカバノキ属樹木の分布などをまとめ,遺存植生検出の情報を整理した。さらに,中部日本の植生変遷を理解する上で極めて重要な樹種であるハイマツとチョウセンゴヨウについて,日本列島および北東アジア大陸部での分布を整理した。
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Research Products
(12 results)
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[Publications] 藤本利之, 百原新ほか: "日本の間氷期堆積物に含まれるサルスベリ属Lagerstroemia花粉化石の形態"植生史研究. 10・2. 91-99 (2001)
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[Publications] 松下まり子, 百原新ほか: "室戸半島大野台の中期更新世間氷期植物化石群"植生史研究. 10・2. 33-44 (2001)
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[Publications] 百原新, 齋藤毅: "上部中新統土岐口陶土層堆積盆地とその周辺の古地形変化に伴う古植生の変化"島根大学地球資源環境研究報告. 20. 205-214 (2001)
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[Publications] 百原新ほか: "千葉県手賀沼湖底堆積物中の埋土種子の分布と保存状態"筑波実験植物園研究報告. 20. 1-9 (2001)
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[Publications] 齋藤毅, 百原新ほか: "古琵琶湖層群甲賀累層よりCathaya花粉の発見"地質学雑誌. 107・10. 667-670 (2001)
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[Publications] Okitsu, S. et al.: "Ecological notes on the heath community on Mt. Eheko,Paramushir Island, northern Kuriles"Memoirs of NIPR Special Issue. 54. 479-486 (2001)
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[Publications] Minami, Y., Okitsu, S. et al.: "Occurrence of bryophytes on Paramushir Island, northern Kuriles, Far East Russia"Memoirs of NIPR Special Issue. 54. 487-493 (2001)
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[Publications] 勝又暢之, 沖津進ほか: "富士山亜高山帯大規模風害跡地における蘚苔類群落の動態"蘚苔類研究. 8・2. 35-41 (2001)
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[Publications] 沖津 進: "シホテーアリニ山脈流域の主要樹種分布および種間関係からみたチョウセンゴヨウ-落葉広葉樹混交林の成立機構"奥田重俊先生退官記念論文集 沖積地植生の研究. 173-182 (2001)
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[Publications] 安田正次, 沖津進: "上越山地平ケ岳湿原の乾燥化に伴うハイマツ・チシマザサの侵入"地理学評論. 74・12. 709-719 (2001)
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[Publications] 福田聡子, 沖津 進ほか: "奥秩父水晶谷渓流周辺部におけるサワグルミおよびサワラの更新"自然環境科学研究. 14. 67-72 (2001)
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[Publications] 沖津 進(分担): "植生環境学"古今書院. 222 (2001)