2002 Fiscal Year Annual Research Report
土壌菌核様粒子内の微生物フロラとその形成環境要因の解明
Project/Area Number |
13680102
|
Research Institution | TOKYO INSTITUTE OF TECHNOLOGY |
Principal Investigator |
渡邊 眞紀子 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 教授 (10175119)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 寛行 茨城大学, 農学部, 教授 (80168947)
|
Keywords | 菌核様粒子 / 活性アルミニウム / 細菌フロラ解析 / X線元素分析 |
Research Abstract |
新潟県妙高山燕岳のブナ林、秋田駒ケ岳付近のスギ植林地およびブナ林下の火山灰土を調査し、菌核様粒子および土壌理化学性の分析を行った。X線元素分析装置(EDXおよびXPS)によって、菌核内のAlの含量、分布および化学結合状態について知見を得た。菌核検出密度はA層で0.26〜1.1g・kg^<-1>、燕岳土壌IIIA層で3.4g・kg^<-1>と最大となり、下の層位ほど小さな菌核が分布する傾向があった。交換性Alが高い層位において菌核1粒子の平均質量が高く、交換酸度(Y1)の原因物質としてAl3+が80%以上を占める層位に菌核が多く存在することを確認した。全窒素・炭素量と菌核の平均質量とが高い相関を示し、水溶性の栄養塩類が多い層位に菌核が多数存在する傾向もみられた。また、腐植複合体Alと炭素の含量比(Alp/C)の値が小さな層位において菌核1粒子の平均質量が大きくなるという興味深い結果が得られた。 燕岳土壌の菌核様粒子から分離した48菌株について、グラム染色等の性状を調べた。代表株についてはAPI20NEキットを用いて形質的特徴を検討し、16SリボソームRNA遺伝子(rDNA)の部分塩基配列の解析を行った。その結果、分離株の90%以上はグラム陰性桿菌であり、それらのグラム陰性桿菌はAPI 20NEキットを用いた性状試験でも共通した生理・生化学的性質を示した。グラム陰性桿菌の代表株の16S rDNA解析では、耐酸性で、水素と炭酸ガスから酢酸を生成して増殖する酢酸産生菌(acetogen)であるFrateuria属細菌と最も近縁であることが判明した。そこで、酸性条件での増殖能を調べた結果、pH4-7の酸性範囲でも明確な増殖が観察された。Frateuria属細菌は酸性で金属含量の高い廃水からの分離例が報告されており、現在、菌核様粒子からの分離株についても、アルミニウム等への耐性を検討している。
|
Research Products
(5 results)
-
[Publications] Watanabe, M., Kado, T., Ohta, H., Fujitake, N.: "Distribution and development of sclerotium grain as influenced by aluminum status in volcanic ash soils"Soil Science and Plant Nutrition. 48. 569-575 (2002)
-
[Publications] 大石隼平, 青木久美子, 渡邊眞紀子, Hardenbicker, U., Pott, A., 太田寛行, 藤嶽暢英: "ドイツ・ハーツ山地のポドゾル-ブラウンエルデ系列における菌核様粒子の分布"日本ペドロジー学会講演要旨集. 14 (2002)
-
[Publications] 鈴木順子, 佐藤嘉則, 藤嶽暢英, 渡邊眞紀子, 太田寛行: "森林土壌中の菌核様粒子から分離された細菌の特徴"日本土壌微生物学会2002年度大会講演要旨集. 51 (2002)
-
[Publications] 坂上伸生, 渡邊眞紀子, 柳由貴子, 太田寛行: "活性アルミニウムに着目した土壌菌核様粒子と土壌性状の関係"日本ペドロジー学会講演要旨集. (発表予定). (2003)
-
[Publications] 井上弦, 渡邊眞紀子, 太田寛行, 藤嶽暢英: "土壌菌核様粒子の化学組成および化学結合状態について"日本土壌肥料学会講演要旨集. (発表予定). (2003)