2001 Fiscal Year Annual Research Report
洗浄機構に関わる流体力の検討 -界面活性剤水溶液の粘弾性挙動の解明と汚れ除去機構との関連-
Project/Area Number |
13680110
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
天木 桂子 岩手大学, 教育学部, 助教授 (80193019)
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Keywords | 界面活性剤水溶液 / 洗浄 / 流体力 / ミセル |
Research Abstract |
洗浄における汚れの除去機構を考える場合,洗液中の界面活性剤や洗浄補助剤による化学作用とともに,外部から被洗物に与えられる物理的作用も重要な要因を占めている.本研究は,物理的作用のひとつである洗浄液の持つ流体力に着目したもので,界面活性剤水溶液を中心に汚れ除去を効果的に行うための有効な流体力の利用方法を解明することを目的とした.今回は特に界面活性剤水溶液の流動時の特徴をミクロな視点から解明することを試みた.すなわち,界面活性剤は水溶液中ではミセルを形成することが知られているが,流動時と静止時とではこのミセル構造がどう変化するかを光学顕微鏡にセットした加熱せん断流動観察システムを用いて観察,比較した. 試料溶液として,O/WエマルションとW/Oエマルションを調製した.界面活性剤ミセルは非常に小さく光学顕微鏡では観察が不可能なため,ミセル中心部に油または水を内包し周囲に界面活性剤分子が吸着した状態とし,この油滴,水滴の挙動を観察することでミセルの挙動を推測した.エマルションの調製には,オレイン酸とイオン交換水,および界面活性剤として水溶性のラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム(LAS)と油溶性のポリオキシエチレン(10)ラウリルエーテル(AE(10))を用い,ホモミキサーで所定時間撹拌した.測定装置は,光学顕微鏡に加熱せん断流動観察システムのステージをセットし中央に少量の試料液を入れせん断流動場を与えるもので,デジタルカメラ,モニタを接続し,PCにインストールしたソフトで制御しながら観察した. 現段階で得られている結果は以下の通りである. 1. O/Wエマルションについて25℃,Shear Rateを0.01-4.1の定常せん断流動下で油滴を観察した結果,静止時に円形だったものがShear Rate0.3あたりから楕円形状に変化した.さらに速度を上げると2.0あたりから線状になり観察ができなくなった.流動をストップするとすぐに円形に戻った. 2. W/Oエマルションで同様の実験を行った結果,O/Wエマルションほどの顕著な変形が認められなかった.これは水滴に比べてまわりのオレイン酸の粘度が高く動きが制限されるためと判断された.このことから設定温度を上げ(50℃,100℃)ることで周囲のオレイン酸の粘度を低下させて同様の実験を行った.その結果,25℃に比べて水滴の動きは制限されにくくなったものの,流動中に水滴どうしの凝集が盛んに行われはじめ,水滴が安定せず観察が困難になった.この点については今後の課題として残された.
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