Research Abstract |
1991年以来,毎年2〜3回,当時未電化であった北タイの農村の全住民に対して,生活実態を定期的,継続的に調査し,得られたデータを分析・研究してきた.当該の村は1996年に電化され,住民はテレビを通じて大量の外部情報を受容した.彼等はこれを契機に村内外の人々と極めて活発に情報交換をするようになった.さらにテレビを通じて都市部の豊かな生活実態に接する機会が増加し,生活向上欲求を強く意識するようになった.家電製品を初めとする耐久消費財を短期間に購入するなど消費を増やす一方で,収入を得るため労働を積極的におこなうようになった.生活時間も都市化の傾向を示すなど,生活形態も大きく変化した.この様な現象的な変化だけではなく,意識・行動・生活価値観などの精神生活の深部や権力構造,生活構造などが大きく変貌しつつあることがわかった. 電化後6年目にあたる平成14年度には,6月及び8〜9月に現地調査を実施した.具体的には,全住民名簿の整備(氏名,年齢,家族関係,就業実態,就学実態など),耐久消費財・生産財保有調査などをおこなった.また,成人の男女各階層(青年・壮年・老年)に対して生活意識・価値観調査に関する質問紙調査,面接調査,観察調査等をおこなった.さらにこの村の実態との比較のため,都市部のチェンマイ市でも同様な調査をおこなった.得られたデータは,統計ソフトSPSSを用いてクロス分析,相関分析等をおこない分析・考察した. タイ国内務省統計事務所(バンコクおよびチェンマイ),主要大学付属図書館(チュラロンコン大学,チェンマイ教育大学)および日本の国立国会図書館,東京都立中央図書館等で,上記に関連する文献を収集した.また,コンケン大学の研究者,チェンマイ教育事務所および当該村を所轄するサムーン郡教育事務所の責任者との研究協力,情報交換を深めた. これまでの成果を日本社会情報学会,日本家政学会等で論文及び口頭発表した.
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