Research Abstract |
本研究の目的は,図形の概念形成を促進する学習指導の方法を確立することである。 本年度は,図形の概念及びそれらの関係を活用する場面を取り入れた授業を通じて,図形の概念を弁別できる状態2の児童が,図形の概念を,相違点を基に弁別し,類似点を基に同類と見なすことができる状態3に到達できることを検証した。具体的には,理解の状態向上を促す要因を考慮して小学校5年生の面積単元の授業を実施し,その前後で四角形の分類に関する質問紙調査を行い,理解の状態向上を確認した。そのために,まず,次の要因を考慮して,小学校5年生の面積単元の授業を実施した。すなわち,図形の面積を求める際に,その図形の概念の性質に着目できるようにすること,平行四辺形,ひし形や正方形の面積を求める際に,既習図形の求積に関連づけることを促し,図形の概念及びそれらの関係を活用して求める方法を確認することである。特に,ひし形の場合,平行四辺形として捉え直し,その面積の求め方を適用することである。次に,この授業が行われた学級の児童40名に対して,その前後で質問紙調査を行い,その結果を分析した。結果として,この授業を受けることにより,児童の理解の状態が有意に向上あるいは保持したと判断することができた。特に,平行四辺形とひし形の関係については,事後調査で状態3に特定された児童は全体の70%となり,状態3に有意に到達できたことを明らかにした。また,ひし形の面積を求めるために,平行四辺形とひし形の関係に着目できた児童は理解の状態が有意に向上及び保持したこと,さらに,面積の求め方の根拠を,図形の概念間の関係を基に考えられることは理解の状態の向上あるいは保持によい影響を与えることを示すことができた。
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