Research Abstract |
最終年である今回は,これまでの研究を総括し,毛筆技能を計測し学習に役立てることの有効性ならびに問題となる事項の抽出を行い,一般化に向けての利用方法の検討を行った。 まず,毛筆技能の計測結果を学習に役立てる事に関しては,習字教科書執筆者および担当編集者らの協力を得て,技能学習装置およびアプリケーションソフト,学習用教材(学習用半紙等)に対する検討会(平成16年6月,東京)を設け,意見聴取を行った。ここにおいては,技能を中心にした書字指導のユニークさや教材についての高い評価が得られた一方,測定装置についてはさらに改善が必要なことなどが指摘されている。なお測定装置については,これら得られた意見をもとに,実用度を高めた改良型の工夫・開発を行った。 また,これまで実験対象が小学生(3年生)のみであったことから,今回は対象を中学生に広げ,その利用範囲や新たな利用形態についての検討を行った。上級者の作業(同じ文字を楷書と行書で書き分けたもの)を測定した結果を表示し比較させたところ,筆法の違いや特徴がよく分かったという感想が多く,習字においても書き方のイメージトレーニングが重要であることが示唆された。 つぎに成果の一般化に関しては,習字の遠隔地間学習を支えるシステムの構想と検討を行い,この内最も重要となる教材データベースについてモデルの試作を行った。今回提案する方法によれば,従来ほとんど不可能であった学習者と指導者が時間的,空間的に隔てられている場合の技能指導および評価が可能であり,遠隔地間学習の一層の充実と発展が図れるものと期待できる。今後は,本格運用が可能なデータベースの構築と教材資料の蓄積が課題となる。なお教材資料の収集においては,標準的な筆法の選定(熟達者は,全く同じに見える文字を違う筆法で書くことができるが,現状では標準と呼べるものが存在しない),標準的な筆や用紙の選定(使用する筆や用紙によって筆圧等が大きく変化するため),収集する文字や筆法の選定(学習上の優先度)など,いくつか解決すべき重要な点が挙げられる。 特記:本科学研究費を受けた研究発表「技能情報を加えた習字教材とその効果」について,平成16年度の日本教育情報学会「奨励賞」を受賞。
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