2002 Fiscal Year Annual Research Report
カナダの公用語政策と第二言語教育の連携についての調査・研究
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13680312
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Research Institution | Naruto University of Education |
Principal Investigator |
伊東 治己 鳴門教育大学, 学校教育学部, 教授 (90176355)
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Keywords | 言語政策 / 公用語 / 第二言語教育 / バイリンガル教育 / カナダの教育 / 英語教育 / フランス語教育 / カナダの公用語政策 |
Research Abstract |
連邦制を採用しているカナダの場合、教育は州政府の管轄で、かつ同一の州においても地区教育委員会や各学校レベルでもかなりの自由裁量が認められている。このように地方分権化が進んだ教育制度の中で連邦政府レベルの公用語政策と各学校現場で行われている第二言語教育の連携の実態を把握するためには、連邦政府・州政府・地域教育委員会・学校の間の協力関係を詳細に分析する必要がある。 そこで本年度も昨年度に引き続き、連邦政府レベルの公用語政策と各学校現場で行われている第二言語教育の連携の実態を把握するため、カナダでの現地調査を首都オタワを中心に実施した。本年度は連邦政府の公用語政策と学校現場での第2言語教育の接点に当たる教育委員会レベルでの聞き取り調査に主眼を置いた。その中でも特に、最近の学校カリキュラムの主流を形成しつつあるoutcomes-based education哲学に基づくカリキュラムの実体とそれと呼応する形で実施された州統一試験、並びにその試験結果の分析と公開を一手に引き受けている教育効果査定機関(Education Quality and Accountabilirty Office)の活動についての調査分析に多くの時間を割いた。 具体的には、平成14年の6月と10月の2回、カナダを訪問し、これまでの研究のフィールドとしているオタワにある二つの教育委員会(オタワ・カールトン地区教育委員会とオタワ・カールトン・カトリック教育委員会)で聞き取り調査並びに資料収集を行った。また、カナダでも屈指の教育学部を有するオタワ大学の第二言語教育関係の専門家とも面会がかない、州統一試験に象徴される最近の教育アカウンタビリティー運動の背景についても有益な示唆を得ることができた。 教育アカウンタビリティーの問題は我が国の教育界においても少しずつその重要性が認識されつつあるが、カナダの教育の場合はこの教育アカウンタビリティーへの取り組みが、単に評価の段階だけでなく、教育政策、カリキュラム、指導法、評価法など児童生徒の教育に関わるあらゆる面で組織的にかつ意欲的に取り組まれている実体が明らかになった。しかも、個々の地区教育委員会や学校のアカウンタビリティーに関する情報がインターネットのホームページを通じて一般に公開されており、教育アカウンタビリティーの分野では実に先進的な取り組みがなされている。 新指導要録の実施に伴い、我が国においても教育評価の問題がクローズアップされ、その中で教育アカウンタビリティーへの関心も高まりつつあるが、カナダでの先進的取り組みは大いに参考になるものと思われる。なお、この2年間の研究の成果は平成14年度の四国英語教育学会、全国英語教育学会、日本カナダ学会おいて口頭発表の形で発表し、かつ、四国英語教育学会紀要と日本カナダ学会年報に論文が掲載され、掲載が予定されている。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] ITO Harumi: "On the linkage between the official languages policy and second language education in Canada"四国英語教育学会紀要. 22. 1-10 (2002)
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[Publications] 伊東 治己: "カナダの公用語政策と第二言語教育の連携の背景と実際"カナダ研究年報. 23(掲載決定済み). (2003)