2003 Fiscal Year Annual Research Report
高次元ポアソン点過程に対するボロノイ・セルの統計分布の研究
Project/Area Number |
13680379
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Research Institution | The Institute of Statistical Mathematics |
Principal Investigator |
種村 正美 統計数理研究所, 調査実験解析研究系, 教授 (80000214)
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Keywords | ポアソン点過程 / ボロノイ・セル / 計算機シミュレーション / 一般化ガンマ分布 / 最尤推定 / 高次元空間 / 空間統計学 / 確率幾何学 |
Research Abstract |
空間に散布された多数の粒子(点)の配置が観測データとして与えられたとき、その粒子配置の統計的性質をデータに基づいて明らかにすることは「空間統計学」の重要課題である。種々の可能な取り組み方の中で、所与の粒子配置に対してボロノイ(Voronoi)分割を行って、その統計的性質を研究するというアプローチは一つの有力な方法として知られている。所与の粒子配置に対する自然な帰無仮説として完全にランダムな粒子配置(ポアソン点過程)が考えられるが、それに対応してポアソン点過程に対するボロノイ分割(及びボロノイ・セル)の統計的性質を明らかにしておくことがボロノイ分割による空間統計学的アプローチに不可欠である。本研究では、2次元だけでなく高次元空間に対して、可能な限り正確にボロノイ・セルの統計的性質を求めることを目指した。理論的には、これまでボロノイ・セルの幾何学的特徴の一部の積率がポアソン点過程に対して知られているのみであったが、われわれの研究では計算機を用いて大量の独立標本を生成して、その統計分布を求める方針で研究を進めた。 最終年度である本年度は、これまで行ってきた2,3,4および5次元のポアソン点過程に対するボロノイ・セルの種々の幾何学量の統計的性質に関して、総まとめとしての研究を行ってきた。ボロノイ・セルの体積に関して、1962年のGilbertの理論的研究があり、体積の2次積率が2重積分の形式で与えられているが、今回それの精確な数値計算を行った結果、われわれの計算機シミュレーションから得られた体積の2次積率の推定値と極めてよく一致することが判明した(2,3,4、5次元のすべてに対して)。このことは昨年度の2次元ボロノイ・セルの三角形の出現確率に関する理論とわれわれの実験との一致という結果と合わせて、われわれの計算機シミュレーションへの信頼性を高める事実となる。また、ボロノイ・セル体積の統計分布に関して、他の幾何学量と同様に一般化ガンマ分布(3パラメータ)への当てはまりが良好であることを既に示し、各次元に対するパラメータの推定値を求めてきたが、それに関連するKiangの予想(Kiang,1966)が明確に否定されることが推定パラメータ値から示された。 研究成果の一部は、2003年8月25-29日にチェコのプラハで開催された12th International Workshop on Stochastic Geometry, Stereology and Image Analysisにおいて"Adjustment models of Voronoi cells"の表題で、また2003年9月22-28日にウクライナのキエフで開催された3rd Voronoi Conference on Analytic Number Theory and Spatial Tessellationsにおいて"Statistical distributions of the shape of Poisson Voronoi Cells"の表題で発表された。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Y.Ogata: "Modelling heterogeneous space-time occurrences of earthquakes and its residual analysis"Applied Statistics. 52(4). 499-509 (2003)
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[Publications] H.Honda: "A three-dimensional vertex dynamics cell model of space-filling polyhedra simulating cell behavior in a cell aggregate"Journal of Theoretical Biology. 226(4). 439-453 (2003)
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[Publications] M.Tanemura: "Statistical distributions of Poisson Voronoi cells in two and three dimensions"Forma. 18(4). 221-247 (2003)
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[Publications] M.Tanemura: "Statistical distributions of the shape of Poisson Voronoi cells"Proceedings of the third Voronoi Conference in Kiev, 2003. (印刷中). (2004)
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[Publications] 種村 正美: "肝臓組織における類洞の立体構造モデル"形の科学会誌. 18(2). 171-172 (2003)
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[Publications] 杉本 晃久: "N個の等大球帽による球面の被覆と充填---N=10,11,12の場合---"形の科学会誌. 18(2). 201-202 (2003)
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[Publications] T.Sugimoto: "Packing and Minkowski covering of congruent spherical caps on a sphere"Research Memorandum, The Institute of Statistical Mathematics. No.901. 1-32 (2003)