2001 Fiscal Year Annual Research Report
感性増幅を意図した動画映像や音楽の編集支援・視聴支援技術の研究
Project/Area Number |
13680497
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Research Institution | Kyushu Tokai University |
Principal Investigator |
井手口 健 九州東海大学, 工学部, 教授 (60289626)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古賀 広昭 熊本電波工業高等専門学校, 教授 (40249884)
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Keywords | 動画映像 / 印象 / 再生速度 / 因子分析 / 音楽 / 振動触覚 / 電磁コイル振動体 / 風船 |
Research Abstract |
本年度は、動画映像再生方法と感性増幅効果の関係の定量化、音楽聴取時に感性増幅効果を得るための振動触覚付与条件の明確化を目標に研究を進めた。 (1)動画映像再生方法と感性増幅効果の関係の定量化 印象の強調を意図した動画映像表現方法として、再生速度を自由に変化させる手法に着目した。本研究では、まず、人が動画映像を見るときどのような印象によって映像を捉えているのかを知り、それらの印象が動画映像の再生速度を変化させたときにどのように変化するのかを定量的に把握することとした。その結果、人が動画映像を見る場合、「気分」、「力」、「質」、「動き」の4つの捉え方していることを、因子分析により把握した。さらに、因子分析により分類された印象語対が再生速度によりどのようなパターンで変化しているか検討した結果、「気分」を表す印象、「質」を表す印象は、Fast再生もしくはSlow再生のどちらか一方だけで変化している。すなわち、どちらか一方の速度変化で印象を強調できるとともに、片方の速度変化では印象を維持しているのである。一方、「力」を表す印象、「動き」を表す印象は、Fast再生とSlow再生で逆の印象を強調している。ただし、「気分」、「力」、「質」を表す印象については、Fast再生、Slow再生で印象語対のどちら側を強調するのかは一律に定まらず、映像の持つ属性から決まるようである。 (2)音楽聴取時に感性増幅効果を得るための振動触覚付与条件の明確化 音楽聴取時に振動付与することにより、音楽のどのような印象を強調するのか、そしてどのような振動付与が有効であるのかを検討した。まず、MIDI音源を用いると特定の楽器(トラック)の振動を抽出できることに着目し、市販の振動ヘッドホンを用いて1つの楽曲(リズミカルでテンポの効いた楽曲「Truth」)について実験を行った。その結果、低音振動やリズム振動のように振動を制御すると音楽の印象が変化すること、リズム振動による「乗りの良さ」が、頭部より掌のほうがより広い範囲の振動の強さで強調されるなどの知見が得られた。次に、音楽の種類、振動付与体の種類、振動させる楽器の種類を変えて、音楽聴取に併せて掌に振動を付与する主観評価実験を行い、振動付与の有効性に結びつく印象強調の種類および振動付与方法の抽出を行った。その結果、楽曲を構成する楽器によって有効性が異なるが「迫力が出た、乗りが良くなった、臨場感が出た、快くなった」などの印象変化が、その有効性の要因となることがわかった。また、リズミカルな楽曲の方が振動触覚付与は効果的であることがわかった。振動付与体に風船を選択した場合、反応させる楽器を選択しなくても有効な感性増幅効果が得られており、楽器分離の困難なCDなど既存の音源ソースに対して有効であることが言える。電磁コイル振動体の場合、選択する楽器によってその有効性に差があり、反応させる楽器を注意する必要がある等の結果が得られた。 以上、動画映像の再生方法や振動付与を伴う音楽が印象に及ぼす影響を定量的に把握できた。今後は、より魅力的な視聴覚に結びつく工学的な設計へと研究を展開する必要がある。
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