2002 Fiscal Year Annual Research Report
感性増幅を意図した動画映像や音楽の編集支援・視聴支援技術の研究
Project/Area Number |
13680497
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Research Institution | Kyushu Tokai University |
Principal Investigator |
井手口 健 九州東海大学, 工学部, 教授 (60289626)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古賀 広昭 熊本電波工業高等専門学校, 教授 (40249884)
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Keywords | 印象 / 音楽 / 因子分析 / 空気振動 / 振動触覚 / 体感音楽聴取法 / シェッフェの一対比較法 / アコースティックギター |
Research Abstract |
本年度は、音楽聴取時に感性増幅効果を得るための振動触覚付与条件を一層明確にするとともに、この検討結果に基づいてより実用的な聴取技術を求めるために研究に専念した。検討結果を以下に示す。 まず、音楽聴取時に振動付与することにより,音楽のどのような印象を強調するのか,そしてどのような振動付与が有効であるのかを昨年度に引き続き検討した.音楽の種類,振動付与体の種類,振動させる楽器の種類を変えて,音楽聴取に併せて掌に振動を付与する主観評価実験を行い,振動付与の有効性に結びつく印象増幅の種類および振動付与方法の抽出を行った.その結果,「迫力が出た,乗りがよくなった,臨場感がでた,快くなった」などの印象変化が振動付与の有効性の要因となることがわかった.さらに,これらの有効な印象増幅はリズミカルな楽曲と静かで穏やかな楽曲の両方で得られ,リズミカルな楽曲ではリズムを与える楽器からの振動抽出により「迫力」,「乗り」,「臨場感」,「快さ」が増幅され,静かで穏やかな楽曲はのびやかで連続的な音を呈する楽器からの振動抽出により「迫力」,「臨場感」が得られるようである.ただし,その場合も必ずしもその楽曲が有している印象が増幅されているとは限らず,振動付与によって上記の印象が新たに増幅されて効果が出ているケースがあることがわかった.また,このような楽曲において,風船による振動付与は振動楽器を選択しなくてもほとんどの楽曲で有効な印象増幅が得られるのに対し,電磁コイル振動体は単体の低周波楽器を選ばないと有効な印象が得られにくいことが明らかになった.このことは,楽器を選択した振動付与の困難なCDなど既存の音源ソースに大して風船による振動付与が有効であることを意味している. 以上得られた結果を吟味し、より実用的な音楽聴取方法の開発に取り組んだ。スピーカー音源を聴取者の遠方に設置する従来のスタイルではなく、音源を限りなく聴取者に近づけること、及び音楽による空気振動を体前面に付与する体感聴取法である。簡単なCDなどの音源を空気振動により伝達することにより完成増幅が有効に得られることに着目したものである。実験装置は市販のアコースティックギターを用い、ギターのサウンドホールにスピーカーを取り付け、ギター本体に音波を直接当てる方法を用いた。複数のジャンルの楽曲においてシェッフェの一対比較法を用いてこの聴取方法が好まれるのかを求め、またこの聴取方法での印象を定量的に求めた。その結果、本聴取法がCDプレーヤーによるステレオ再生よりも好まれること、また「乗り」や「迫力」をはじめとした印象を強調させ、「快さ」や「癒し」にもつながる効果があることが分かった。ただし今回の実験はアコースティックギターのみを実験装置として用いた結果である。普遍的な結論を得るためには更に様々な楽器や形状のもの、また多種の曲において同様に実験を行う必要があると考える。 この体感聴取方法は体前面に音楽振動を付与する点、楽器自体から演奏が聴こえ振動を感じる点、動作からくる心理的影響といった要素を含んだ新たな聴取方法である。
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Research Products
(1 results)