2001 Fiscal Year Annual Research Report
活性酸素のもたらすミトコンドリアゲノム酸化損傷はいかに修復されるか?
Project/Area Number |
13680618
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高尾 雅 東北大学, 加齢医学研究所, 助手 (70216612)
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Keywords | 活性酸素 / ミトコンドリア / DNA修復 / 老化 / 発がん / ノックアウトマウス / 塩基除去修復 / DNAグリコシラーゼ |
Research Abstract |
本研究は,活性酸素がもたらす「発がん」や「老化」に対抗する細胞防御として,ミトコンドリアの「酸化DNA損傷修復」がどれほど重要であるかを明らかにすることを目的とする。本年度は,ミトコンドリアや核の酸化損傷修復に欠損めあるマウスの解析を行い,あらたな修復酵素の存在を示した。 DNAグリコシラーゼのひとつ-NTH1-は,核とミトコンドリア両方の酸化ピリミジン塩基のDNA修復を担当する。このNTH1ノックアウトマウスを作製したところ,1)個体に顕著な異常がみつからない,2)細胞の酸化ストレス感受性にも変化がない,3)チミングリコール(主要な酸化ピリミジン塩基)の蓄積もみられず,放射線で誘導した損傷も正常値に減少すること等が分かった。そこで,このマウスからの抽出液を詳しく調べると,これまでみつけられてこなかったNTH1以外のDNAグリコシラーゼ活性が検出できた。このバックアップ酵素活性は,ミトコンドリアで1種,核で少なくとも2種類ある(論文投稿中)。続いて,NTH1と同様の活性を示すヒト・マウスの「新規」酵素遺伝子を単離解析し,これがNTH1ノックアウトマウスの核で働くバックアップ酵素の1つであることを証明した(論文準備中)。この遺伝子の更なるノックアウトや,ミトコンドリアに残存する修復活性の精製・同定も進行中である。 酸化プリンの修復DNAグリコシラーゼOGG1のノックアウトマウスのミトコンドリアでは8-オキソグアニンの蓄積が20倍も高いという。それにひきかえ,酸化ピリミジンの修復酵素は,核とミトコンドリアを含めて4種以上もある(上述)。このことは,酸化DNAの中でもピリミジン損傷の修復が哺乳類にとっていかに重要であるかを示唆している。個々の活性の役割分担(例えば転写に共役した修復や,DNA複製時の修復など)を念頭におけば,老化や発がんに結びつくDNAの酸化損傷をいかに効果的に修復するかという応用展開も期待できる。
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