2002 Fiscal Year Annual Research Report
慢性砒素中毒によるNO産生に係る因子の変動とそれに起因する血管調節系の撹乱
Project/Area Number |
13680620
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
下條 信弘 筑波大学, 社会医学系, 教授 (00080622)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山内 博 聖マリアンナ医科大学, 予防医学, 助教授 (90081661)
熊谷 嘉人 筑波大学, 社会医学系, 助教授 (00250100)
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Keywords | 慢性砒素中毒 / 一酸化窒素 / 機能障害 / 循環器疾患 |
Research Abstract |
【目的】我々は中国内モンゴル自治区の慢性砒素汚染地域においてフィールド調査を行い、砒素曝露群の血清中一酸化窒素(NO)代謝物濃度は、対照群のそれの約半分まで低下していたことを明らかにした。一方、血管内皮型NO合成酵素(eNOS)はアルギニンからNOを産生し、血管調節に重要な役割を担っている。本研究ではウサギに5価無機砒素を慢性飲水させ、eNOS機能障害に係わる生体内NO産生低下メカニズムの解明を目的とした。 【方法】砒素曝露:5価無機砒素(5mg/L)を18週間ウサギ(New Zealand雄性)に飲水させた。血漿中NO量:NO3-/NO2-量として算出した。尿中過酸化水素量、組織中アルギニンおよびBH4含量:既法に従った。血管弛緩の決定:摘出ウサギ大動脈をオルガンバスに懸垂して収縮張力を測定した。スーパーオキシド産生:Tiron反応物としてESRで測定した。 【結果・考察】砒素曝露後18週目における血漿中NO代謝物量は、曝露群が対照群の76.3%(P<0.05)まで低下した。一方、尿中過酸化水素量は、曝露群が対照群の1.2倍(P<0.05)高い値を示した。心臓中アルギニン量については両群共に差は見られなかったが、肝臓中BH4濃度は砒素曝露は対照群の62.4%(P<0.01)まで減少した。カルシウムイオノファA23187による大動脈リングのeNOS依存性弛緩において、砒素曝露により抑制傾向が観察された。さらに、砒素曝露群の大動脈リングはA23187(10nM)添加直後に血管収縮が観察された。砒素曝露群の大動脈リングにA23187(10μM)を添加するとスーパーオキシド産生がみられた。以上より、5価無機砒素を慢性飲水によりeNOSの機能障害が生体内NO濃度低下の一因であることが示された。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Pi JB, Yamauchi H, Kumagai Y et al.: "Evidence for induction of oxidative stress caused by chronic exposure of Chinese residents to arsenic contained in drinking water"Environmental Health Perspective. 110. 331-336 (2002)
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[Publications] Kumagai Y, Shimojo N.: "Possible mechanisms for induction of oxidative stress and suppression of systemic nitric oxide production caused by exposure to environmental chemicals"Environmental Health and Preventive Medicine. 7. 141-150 (2002)